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景品表示法とは?|知っておくべき広告における「景品表示法」

この世に存在する無数の広告には、商品やサービスの質や安さを売りにしているもの・効能の良さ・立地の良さなど 謳い文句がつきものです。広告や販促物を制作する際、商品やサービスの魅力を最大限に伝えたいという思いは当然です。しかし、つい見栄を張った表記してしまったり、表示についての知識がなくてクレームを引き起こしてしまうなどのトラブルを招いてしまうケースが考えられます。 日本には景品表示法という法律があり、不当な表示をしてはならないという決まりがあります。そのため、事業者とデザイナーの双方が「景品表示法」の基本を理解し、適切な表示を心がけることが重要です。

 

景品表示法とは?
さまざまな景品表示法違反
まとめ

 

景品表示法とは?

正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」で、消費者が商品やサービスを選ぶ際に誤認を防ぐことを目的としています。主に以下の2点を規制しています。

不当な表示の禁止
実際よりも優良であると誤認させる表示や、価格・取引条件について誤解を招く表示を禁止します。

過大な景品類の提供の制限
過度な景品の提供を制限し、公正な競争を維持します。


消費者なら、誰もがより良い商品やサービスを求めます。ところが、実際より良く見せかける表示が行われたり、 過大な景品付き販売が行われると、それらにつられて消費者が実際には質の良くない商品やサービスを選んでしまい、不利益を被るおそれがあります。 景品表示法は、商品やサービスの品質・内容・価格などを偽って表示することを厳しく規制し、さらに過大な景品の提供を防ぐために上限額を定めるなどのルールを設けています。これにより、消費者が商品やサービスを正しく理解し、自主的・合理的に選べる環境を守ることを目的としています。

それでは、さまざまな景品表示法違反の例を見ていきましょう。

 

さまざまな景品表示法違反

景品表示法では、「優良に見せかける」「お得に見せかける」といった誤解を招く表現をはじめ、消費者の判断を惑わせるあらゆる表示が規制されています。ここでは、広告や販促物で特に注意すべき代表的な違反例をご紹介します。

食品偽装

景品表示法と聞いてまず「食品偽装」問題を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか?1930年代ごろから昨今に至るまで 度々ニュースに取り上げられているので耳にしたことがあるかと思います。産地や原材料、消費期限などを偽って表示するケースをいいます。 当たり前ですが、消費者に正しい産地・原材料・期限を伝えることはとても重要で、もし問題が起こった際には消費者だけでなく、社会からの 信頼も失ってしまうでしょう。特に誤った原材料・期限を伝えることはアレルギーへの懸念や食中毒を引き起こす原因になりかねません。「食品偽装」は、消費者の健康被害や企業の信頼失墜につながる重大な問題です。

 

誇大広告

虚偽の情報や本来より誇張して表現した広告を「誇大広告」といいます。
「飲食店のメニューの写真と実際に出てきた写真が全く別物!」とSNSで軽く騒ぎになったりすることがあります。そこまでで収まればいいのですが、 偏った虚偽・誇張を打ち出すと、これもまた大きな問題へと発展していきます。
誇大広告の分かりやすい例として「有利誤認表示」「優良誤認表示」の2つを紹介します。

 

有利誤認表示

商品やサービスの価格や取引条件などが、実際より著しく有利であると誤認させる表示のことです。以下に具体例を記載します。

○ 通常価格を「10,000円」として「50%OFF!」と宣伝しているが、実際は常に5,000円で販売している。

○「先着100名様限定!」としながら、実際はそれ以上に提供している。

○ 送料無料と書いているが、別途手数料がかかる。

「安く買える・条件がいい」と誤解させることで、消費者の判断を狂わせることが問題になります。曖昧でまぎらわしい・分かりにくい表記は避けた方がよいでしょう。

優良誤認表示

商品やサービスの品質・性能・内容などが、実際より著しく優良であると誤認させる表示のことです。以下に具体例を記載します。

○ 「100%天然成分配合」と表示しているが、実際は一部のみが天然成分である。

○ 他社製品と比較して「最も効果が高い」と表示しているが、根拠となるデータが存在しない。

○ 「医師が推奨!」と記載しているが、特定の医師の個人的な感想に過ぎない。

「実際よりも良さそうに見せる」ことで、消費者に誤った印象を与えるのが問題です。デザイナー側もつい商品をよく見せようとして過度なレタッチをしたりしてしまいがち。直しすぎには注意しましょう。 また、医薬品や医療機器に関しては「薬機法」という別の法律があり、情報を誇大することを完全に禁じています。このように他の法律にも結びつく例もあります。

おとり広告

実際には購入できない商品やサービスを、あたかも購入できるかのように見せかけて消費者を誘引する表示のことです。
以下に具体例を記載します。

○ 不動産広告で、すでに契約済みや存在しない物件をネット掲載し、問い合わせた消費者に別物件を勧める。

○ 飲食店で「100食限定」と告知しながら、その商品をまったく用意しておらず、代わりに別商品を勧める。

○ 通販サイトで「タイムセール中!」と表示しているが、実際には在庫がない商品を掲載し続ける。

おとり広告は、「実際には提供できないのに提供できると装う」点が問題です。消費者を誤って誘導する行為として、景品表示法の中でも特に悪質とされます。
不動産業界では「宅地建物取引業法(宅建業法)」により、おとり広告や誇大広告は厳しく禁じられています。業界によっては景品表示法以外にも専門の法律が存在します。

根拠なしランキング

「業界No.1」「売上No.1」などの表現を使いながら、出典や調査条件が不明確または存在しないケース。
「※自社調べ」も信頼性が薄く、注意が必要です。具体例は、

○ 「お客様満足度No.1」と表示しているが、調査は社内アンケートだけ。

○「業界初!」と謳っているが、調査が不十分で他社でもすでに実施されていた。

根拠のない優位性の強調は「優良誤認」とみなされる可能性があります。

実質無料なのに「完全無料」

「無料」と表記しつつ、実際には送料・登録料・手数料などがかかる場合。有利誤認に該当する場合があります。
具体例は、

○ 「0円体験!」と表示しているが、事前にクレジットカード登録が必要で、一定期間後に自動課金される。

○「初回無料」と記載されていても、実は返送しなければ継続課金される仕組みになっている。

セール詐欺

「通常価格」と「セール価格」を併記する際に、通常価格が実際にはその価格で販売されていなかった場合に違反となります。
具体例は、

○ 通常価格「10,000円 → 特価5,000円」と表示しているが、10,000円で販売した履歴がない。

「二重価格表示」の正しいルールは、過去8週間のうち2週間以上その価格で販売されていたことなどが基準になります(公正取引委員会ガイドラインより)。

曖昧な比較広告

他社と比較して自社を有利に見せる際、比較対象が不明確だったり、公正な基準でない場合は違反となることがあります。
具体例は、

○ 実質無料なのに「完全無料」「他社より断然お得!」と表示するが、どの他社と比較しているのか不明。

○ 一部商品のみ比較し、それが全体を代表するように見せる。

やらせレビュー

第三者の評価を装って、実際には広告主が作成した感想を掲載する行為。消費者の信頼を意図的に誤認させる表示として問題視されます。
具体例は、

○ モニターの感想に見せかけた文章が、実は企業が作ったもの。

○ SNSでの「#PR」表記がなく、一般人の本音のように見せている。

ステマ規制

広告であるにもかかわらず、第三者の発信であるかのように装う表示や投稿を指します。
具体例は、

○ 企業が依頼したインフルエンサーが、広告表記(#PRなど)をせずに商品を褒める投稿を行う。

○ 自社社員が一般ユーザーになりすまし、口コミサイトやSNSに肯定的なレビューを書く。

○ 実際は取引関係にあるのに、その事実を伏せて「個人の感想」としてブログに掲載する。

企業が広告として発信していると一般消費者が分かるような表示(たとえば「広告」「PR」「提供:〇〇社」など)を明確に行う必要があります。
広告であることを隠した宣伝は、消費者の判断を不当に操作する行為として、悪質な不当表示と見なされます。広告主(企業)に表示義務があるため、「知らなかった」では済まされません。

 

まとめ

いかがだったでしょうか? 景品表示法は、消費者が正しい情報をもとに商品やサービスを選べるようにするための大切な法律です。誤解を招く表示や過剰な演出は、企業の信頼を損なうだけでなく、法的リスクにもつながります。広告や販促に関わる立場であれば、事業者・デザイナー問わず、正しい知識を身につけておくことが不可欠です。小さな表現の選び方ひとつで印象は大きく変わります。「知らなかった」では済まされない今だからこそ、誠実な情報発信を心がけましょう。

なお、表現のチェック体制や校正の重要性については、別のコラムでも詳しくご紹介しています。未然にトラブルを防ぐためにも、ぜひあわせてご覧ください。

https://s-modern.com/column/2938/

適切な情報を、分かりやすく、そして正しく伝えることは、消費者の安心につながるだけでなく、広告への信頼感や興味にも直結します。
消費者に選ばれるためにも、安心して見てもらえる、そして心に届く広告づくりを一緒に目指していきましょう。