マーケティングと行動心理学 その13―コンコルド効果―
これ以上続けないほうが良いと解っていても、今まで費やした時間やお金がもったいないと感じてやめられないってこと有りませんか?それは「コンコルド効果」と呼ばれる心理効果が働いているためです。今までのコラムでも紹介してきた「ハロー効果」や「バンドワゴン効果」などと同様に、物事の判断が、直感やこれまでの経験に基づく先入観によって非合理的な決定をしてしまうという「認知バイアス」と呼ばれるものの一種です。「コンコルド効果」はビジネスに置ける転用もやり方次第では効果を発揮しますが、まずはこういった状態にならないため、また、なってしまった時の対処法などをご紹介してまいります。
1. コンコルド効果とは?
2. 日常に潜むコンコルド効果
3. コンコルド効果3つの対処法
4. 今回のまとめ
「コンコルド効果」とは?
「コンコルド効果」とは、あるものに対して金銭的・精神的・時間的に投資をしているとき、このまま続けると損失を出すとわかっていても、これまで投資した分を惜しんで継続してしまう心理現象のことです。簡単に言ってしまえば「もったいない」という気持ちに縛られているような状態だと思ってください。名前の由来は、世界規模で商業的大失敗を遂げた超音速旅客機「コンコルド」からきているそうです。コンコルドは1960年代に開発が始まり、世界初の超音速旅客機として評判となり、世界中から注目を集めました。しかし乗客定員数の少なさや燃費の悪さなどの問題から、採算が取れないことが開発途中で判明していました。にもかかわらず費やした費用を惜しみ、開発は中止されず、遂には運航をスタートします。結果、騒音問題、オゾン層の破壊などの環境問題やオイルショックなどの影響もあり、最終的に開発会社は膨大な損失を出して倒産しました。このようなエピソードになぞらえて、損失がでると解っていながら投資を続けてしまうことを「コンコルド効果」と呼ばれるようになりました。また、コンコルド効果を語るとき、よく使われる「サンクコスト」という言葉もご紹介します。このサンクコストとは「埋没費用」とも呼ばれ、すでに投資してしまったお金や時間、労力など、もう取り返すことができないコストのことを指します。このサンクコストを惜しんで「もったいない」「元を取りたい」と感じる心理を「サンクコスト効果」とも言われています。
日常に潜むコンコルド効果
ギャンブル
コンコルド効果の最たる例がギャンブルです。ギャンブルで負けが続くと、次こそは勝って損した分を取り戻そうとすることがあります。この状態がコンコルド効果です。「次は当たるかも」という淡い期待にやめることが出来ず、結果的に大きな損害を出してしまうことになります。こういった抜け出したくても抜けられない、やめたくてもやめられないというのはコンコルド効果の典型的な例だと言えます。余談ですが当社の事務所がある愛知県には「コンコルド」という屋号のパチンコ店が存在しています。言い得て妙と言いますか、なかなかウィットに富んだ名称ですね。
スマホゲーム
ソーシャルゲームなどのオンラインゲームには「ガチャ」と呼ばれる課金要素が存在します。簡単にいえば「くじを引いて、ランダムにゲーム内で使用するカードやキャラクター、アイテムや装備品などがもらえる」というものです。課金額が確率に関係ないとはわかっていても、今まで課金したお金が惜しくて、目当てのアイテムが出るまでガチャを回し続けてしまう、これもコンコルド効果です。また、ゲーム自体に飽きてしまっていても、費やした時間を惜しんでやめられないというケースも存在します。
事業/プロジェクト
ビジネスシーンでは、名前の由来になった旅客機の事業と同様に、充分な収益が見込めないプロジェクトにも関わらず、ここまでかけたコストを考え、撤退の決断ができないといったことがあります。他にも「会社の経営が傾いたとしても、長く働いてきた職場だから辞めたくない」、「せっかく苦労して資格を取得したので、資格に関係ない仕事に就くのはもったいない」などの思考もコンコルド効果と言えます。
コンコルド効果3つの対処法
① 損切りする
「損切り」とは、損失を抱えていて、その後の回復が望めない場合に、損失を確定させることを言う金融用語です。あらかじめ使う額を決めておいたり、投資の期間を決めたりするなど、損切りポイントを決めておくのが効果的です。損失が設定額や期間に達したら、問答無用で撤退や規模縮小に踏み切ります。もしも損切りすることになっても、自分を責めすぎたり後悔するだけではなく、その間の経験や成長できたことなどに意味を見出すようにしましょう。
② ゼロベース思考
「ゼロベース思考」とは、「今までは今まで、これからはこれから」と、割り切って考える思考方法です。一度ゼロに立ち返り、白紙の状態から物事を考え直すことで、冷静な判断がしやすくなり、こういった認知バイアスから解放され、新たな一歩を踏み出すことが出来るのです。回収できないコストを無理に回収しようと躍起になるのではなく、損失を最小限に抑え、新たな一歩を踏めたことを良しとする考え方も必要です。
③ 損益計算
どうしても撤退や事業縮小に踏み切れないなら、一度損益を計算してみるのも効果的です。コンコルド効果の影響化では、投資したコストを惜しむ気持ちが大きいため、正常な判断ができません。しかし、どんな精神状態であろうと、数字は現実を突きつけてくれます。事実に基づいた数字だけを使い判断することで、冷静で客観的な視点を取り戻すことが出来ます。
今回のまとめ
もったいないという気持ちから、それまで費やした投資を惜しむことで、わかっていても辞められない心理現象であるコンコルド効果を紹介しましたが、皆様も経験があると思いますが、ビジネスシーンをはじめ日常に置いても、とても起こりやすい心理現象です。こだわってきたものを手放すのには勇気がいります。「損をした」と悔やむこともあるかもしれません。しかし手放すことで、新しい何かが手に入るかもしれません。私達人間にとって、常に客観的かつ合理的な判断を下すことは難しいことですが、こういった心理に陥った時、今回紹介したようなカラクリになっていることを頭の片隅に置いていただければ、冷静になれる糸口が見付かるかもしれません。
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