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マーケティングと行動心理学 その6―ハロー効果―

学歴の高い人は、何をやらせても優秀と思ってしまったり、なんとなくルックスがいい人は性格もよさそうに見えたり・・・なぜか他人に実力以上の期待をしてしまったということはありませんか?これは「ハロー効果」と呼ばれる心理効果が働いています。ビジネスでも多く活用されるこのテクニックを使って効果的なマーケティングを実施してみては?

1.  ハロー効果とは?
2.  「ポジティブ・ハロー」と「ネガティブ・ハロー」
3.  ハロー効果のデメリットと対策
4.  今回のまとめ

ハロー効果とは?

ハロー効果とは、ある対象を評価する際、目立ちやすい特徴に引きずられ他の特徴や対象全体についての評価が歪められる現象のことで、アメリカの心理学者、エドワード・ソーンダイクが1920年に書いた論文の中で初めて用いられた心理効果です。この「ハロー」とは、神や仏の背中から放射するとされる神秘的な光を意味します。そのため「後光効果」「光背効果」とも呼ばれることもあります。ハロー効果がはたらくと、対象者の目立つ特徴や他者よりも優れたり劣ったりする一面が、後光のようにその人の後ろから差して、その人を立派に見せたり劣って見せたりすることがあるため、そのような名称が与えられました。
ハロー効果の実験で最も有名な、社会心理学者ソロモン・アッシュの「印象形成実験」を紹介します。まず被験者に、人物AとBの性格の特徴を列挙した紙を見せます。それがこちらです。

A:知的、敏腕、勤勉、温かい、てきぱきしている、現実的、注意深い
B:知的、敏腕、勤勉、冷たい、てきぱきしている、現実的、注意深い

この二つのリストの違いは「温かい、冷たい」の違いのみですが、たったこれだけの違いで被験者はAを肯定的に、Bを否定的に評価したそうです。この結果は、人の印象が作られる際、個々の特性を単に足し合わせたものではなく、全体として見たひとつのまとまりとして印象が作られるということが明らかになりました。さらに被験者たちにはもう一つリストを提示します。

A:知的、勤勉、強力、非難的、頑固、嫉妬深い
B:嫉妬深い、頑固、非難的、強力、勤勉、知的

二つのリストの違いは言葉の並び順だと気付きましたか? この実験でもたったこれだけの違いで被験者が受け取ったイメージはやはりAとBで異なり、Aの人物イメージは「欠点はあるが、能力のある人」、Bは「欠点があるため能力があっても残念な人」という結果になったそうです。この実験により、どんな印象を最初に得るかで相手への評価が変わるということが証明されました。

「ポジティブ・ハロー」と「ネガティブ・ハロー」

ハロー効果には「ポジティブ・ハロー効果」と、「ネガティブ・ハロー効果」と呼ばれるものがあります。「ポジティブ・ハロー効果」とは、人の際立った長所を見て、他の点も実際より高く評価するハロー効果の事を言います。例えば、「このビジネスマンは清潔感があってはきはきと笑顔で応対できる。きっと仕事ぶりも優秀だろう」と判断したり、冒頭で触れた「学歴フィルター」のように、名門大学を卒業した新入社員は、通常の大学を卒業した新入社員と比べて、社員から期待されることが多くなったりなど、論理上非合理的であるにもかかわらず、根深く結びつけられている。このポジティブハロー効果はマーケティングや恋愛テクニックなどでも効果を発揮する、とても有益な心理効果です。
対する「ネガティブ・ハロー効果」とは、ポジティブ・ハロー効果の正反対、ある特定の印象が悪いと感じた場合に他の観点でも評価を下げてしまう現象のことです。例えば、派手な服装をしている人について「不真面目な人だ」「仕事を任せるのは不安な人だ」と評価してしまうことが挙げられます。服装が派手であっても、その人が不真面目な人だと決まったわけではありません。また、自分が挨拶をしたときに挨拶を返さなかった人について「人を見下すような意地悪な性格だ」と早合点してしまうこともネガティブ・ハロー効果だといえます。論理的に考えると、挨拶を返さなかったことが「人を見下している」直接的な根拠になると考えることは早すぎる決断だといえます。挨拶を返さなかった人が、自分の挨拶に気がつかなかったために返さなかった、という可能性も十分に考えることができます。
この両者に共通する点として、それぞれのハロー効果に影響されてしまうと、人は他者を正しく評価することができなくなってしまうということが挙げられます。他者を正しく評価するためには、肩書きや見た目などの特徴から必要以上に影響を受けないよう、意識する必要があるといえます。

ハロー効果のデメリットと対策

ハロー効果のデメリットの代表は「不当な評価」です。ネガティブハロー効果でも紹介したように、見た目や話し方、経歴などに目立つマイナス点があった場合にその人全体の評価が下がってしまったり、実力を鑑みられなかったりします。また、即断即決のために起きたハロー効果は、持続力がなく最初だけしか効果がありません。例としては「一流大学卒だからデキる男だと思ってたのに実務能力なさすぎ!!」「かっこいいから付き合ったけど、中身はうすっぺらだった・・・」などがあげられます。要するに、イメージと現実の落差が激しいのでガッカリしてしまうということです。対策としては先入観や思い込みを排除することが大切です。ハロー効果は、経験則や知識のよる思い込みが原因ですから、これに気を付けて自覚的になれば自然と防ぐことができます。ただ、完全に先入観を排除し第一印象をまったく持たないというのはまず不可能です。ですが「この第一印象はハロー効果が働いているんだな」と自覚しているだけで、ぐっと軌道修正ができます。

今回のまとめ

ハロー効果の罠にひっかからずに多角的に相手を見定め、なおかつ自身は適度にポジティブハロー効果を活用して印象を上げていくことができれば、ビジネスシーンだけでなくプライベートにおいても評価向上や、セルフプロデュースに活きていくはずです。ただしくれぐれも使いすぎにはご注意くださいね。

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