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マーケティングと行動心理学 その5―ザイオンス効果―

このブログをご覧いただいている方の中で営業職の経験がある方は「1件でも多く顧客を回れ!」「足で稼げー!」と上司に指示されて、そのひと昔前の営業スタイルに反発心を抱いたことはありませんか?「用もないのに何度も訪問して本当に受注につながるのか?」なんて考えているあなた、これからお話する心理効果「ザイオンス効果」を知ると、上司の忠告に「一理あったのかも」と思うかもしれません。

1. ザイオンス効果とは?
2. ザイオンス効果の使用例
3. 使用上の注意点
4. 今回のまとめ

ザイオンス効果とは?

例えばテレビCMを例に挙げると、最初は気にも留めなかったCMを何度となく見ているうちに、タレントや流れてくる音楽に次第に好感を抱くようになることがありませんか?これが「ザイオンス効果」です。「ザイオンス効果」とは、同じ人やモノに接する回数が増えれば増えるほど、その人やモノに対して好印象を持つようになるという心理現象のことを言います。ポーランド出身のアメリカ社会心理学者、ロバート・ボレスワフ・ザイアンスが、1968年に発表した論文で明らかにした心理学理論です。その名前にちなんで「ザイオンス効果」と呼ばれるようになりました。論文の中でザイアンス氏が行なった実験は、大学生を被験者とした単純なもので、卒業アルバムの中から12人分の写真を抜き出し、被験者にランダムに見せていき、どの写真がもっとも印象がよかったかを尋ねます。このとき、見せる回数は写真によって1〜25回の範囲でばらつきをもたせます。すると、被験者は見た回数の多かった写真ほど印象がよかったと答える傾向がありました。目にする機会が多いものほど強い印象をもつということがわかったのです。

ザイオンス効果の使用例

まずは冒頭でも触れた「営業」業務。営業担当者は自社の商品を売るために現場をまわりますが、はじめて訪れた客先でいきなり売り込みを始めるということはあまりしません。はじめのうちは、顔を出してはちょっとした雑談をするということを繰り返し、信頼を得ることに専念するのです。そのうえで、十分な信頼を得ることができたと確信できたタイミングで、いよいよ売り込みをはじめます。これこそ「足で稼ぐ」といわれる古典的な営業スタイルです。それらを支持する上司・上役は、この「ザイオンス効果」を知ったうえで行動しているわけではないのかもしれませんが、実はザイアンス氏の理論に照らし合わせてもたいへん合理的だといえるのです。さらに顧客が営業担当者によい印象をもったタイミングであれば、紹介された商品についても同様によい印象をもつ可能性が高いのです。これはつまり「用もないのに何度も訪問すると受注につながる可能性が上がる」と言えてしまいます。私を含めて考えを改めなければならない方がいるかもしれませんね。
他にもテレビCMや広告、看板、チラシなどの「プロモーション活動」でも非常に効果を発揮します。「ザイオンス効果」を引き出すためには、接触の頻度がポイントになります。例えば、同じ商品の広告を毎日のように目にすれば、その商品のことがだんだん気になってきます。しかし、1カ月ごとに1回だけしか広告を目にしない場合は、たいして気にならないものです。ザイオンス効果を活用してユーザーに商品への興味をもってもらうためには、できる限り短期間のうちに何度も見てもらうほうが効果的です。短期間に何度も同じテレビコマーシャルを観たことがあるのではないでしょうか。これは、同じ回数だけコマーシャルをみるとしても、ときどきみかけるだけの場合より頻繁に目にするほうが好感をもってもらいやすいため、あえて集中的に放送しているのです。

使用上の注意点

繰り返し接触することで好意をもってもらえるといわれても、具体的に何回を目安にすればよいのかが気になりませんか?実は「ザイオンス効果」が得られる接触回数は10回が上限と言われています。同じ広告は10回見たその後は何回見せてもイメージに影響を与えないということです。このことを知っていれば、宣伝の無駄を省いて効率化できる可能性があります。同じく営業業務も10回訪問して良い顔をしてもらえないなら、アプローチを変えるなり、潔く諦めて他のクライアントの開拓に力を入れるほうが良いかもしれませんね。また、基本的には「ザイオンス効果」では接触回数が多いほど好感をもってもらえるという理解で問題ありませんが、より正確には「接触回数が多いほど印象が強くなる」。つまり、第一印象が悪い場合はそのネガティブな印象が強くなってしまうことがあるので注意が必要です。

今回のまとめ

「ザイオンス効果」は、繰り返し触れているうちに好感をもつようになっていくという心理学に基づく法則。人だけでなく商品やサービスにもあてはまる法則なので、多くの企業がマーケティングや営業に取り入れています。うまく取り入れてビジネスの役に立ててはいかがでしょうか。

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