広告事例研究|日本パッケージデザイン大賞2021で注目すべき3点

昨年の話題になりますが2020年9月「日本パッケージデザイン大賞2021」が発表となりました。日本パッケージデザイン大賞は、流通する商品パッケージのデザイン性や創造性を競うコンペティションで、1985年から隔年で開催されています。今回の開催では約800点の作品から大賞・金賞・銀賞・銅賞・特別審査員賞などが選出されました。そして最高賞となる「大賞」にはサントリーの「伊右衛門」ラベルレスペットボトルが選ばれました。今回の受賞作2019年2017年 開催のものと比べてると明らかに潮目が変わったように感じられます。見た目のデザインよりも「地球環境」や「日常での使われ方」に配慮するデザイン思想が評価されているように思います。私が3月に行われた名古屋の巡回展で見た多くの受賞作品の中でも、パッケージのアワードであるにも関わらずラベルの無い(=ラベルレス)商品が受賞しているのに驚いたのと同時に、前回の開催からたった2年で世の中の価値が大きく変わったことを実感しました。ラベルをなくすことが「良いデザイン(=良い思想・良い取り組み)」であると評価されたのです。今回のコラムではこのような視点で、日本パッケージデザイン大賞2021受賞作で注目すべき3点を紹介したいと思います。

1.事例① 【大賞】サントリー緑茶 伊右衛門 600mlペット ラベルレス
2.事例② 【銅賞】アサヒ ラベルレスボトル
3.事例③ 【特別賞】ハンドラボ手指消毒
4.今回のまとめ

 

 

 

事例① 【大賞】サントリー緑茶 伊右衛門 600mlペット ラベルレス

まずは最高賞となる「大賞」を受賞した事例から。2020年4月、サントリーの「伊右衛門」はペットボトルからラベルをなくすという大胆なリニューアルを行いました。
実は商品のリニューアルの初期段階はラベルレスにする予定ではなかったようです。ラベルレスのパッケージになった経緯としては、従来からの大きな変更点である「お茶の色が茶色から緑色になった」ということをよりストレートに伝えたい、という意図があったようです。「緑茶本来の鮮やかな緑の水色(すいしょく)を一番良く見せたい」というクライアントのお題を「ラベルをなくす」という答えで返した素晴らしいクリエイティブです。SDGsの時代の波にも乗り売上は好調。話題にもなった新聞広告では写真家の篠山紀信氏を起用し「ラベルを脱いだ姿」を撮影しています。篠山紀信氏は「ここはやはり僕が撮らないといけないなと思いました。」とコメント。この話題はツイッター上で広がり、約6万ビューを獲得。多くの口コミを生みました。商品・新聞広告・テレビCM・店頭PR・キャンペーンなど全ての媒体において一貫した「緑」でイメージを踏襲し販売週前比378%を達成。コンビニにおいては前比190%超えを3ヶ月維持するという驚異的な結果をもたらしました。話題作りが大変上手くプランニングが素晴らしいとしか言いようがありません。ペットボトル商品が乱立するなかで他社ブランドとの違いを見せつけたとても参考になる好例です。

https://www.suntory.co.jp/softdrink/iyemon/campaign/special/

 


 

 

 

事例② 【銅賞】アサヒ ラベルレスボトル

先ほどはサントリーの事例を紹介しましたが、実は2018年に業界の先駆者として初めて「ラベルレスボトル」を開発したのはアサヒ飲料でした。開発の始まりはオンライン販売専用商品への導入でした。2020年頃から一気に広がり今では当たり前に思えるかもしれませんが、考えて見れば、家で飲むものをネットで購入する行為に対して、POP代わりのラベルは必要ありませんよね。結果、プラスチックの削減につながれば地球環境に優しいし、さらには製造コストが抑えられれば販売単価にも反映されるので消費者にも好都合ですよね。現在は他のブランドにも広がり環境意識の高まりやSDGsの取り組み、コロナ禍における巣ごもり需要の影響で業績をさらに伸ばしているとのことです。また対象となるブランドも増え、同社の「おいしい水」「十六茶」「カルピス」「ウィルキンソン」などもラベルレスでオンライン販売されています。ホームページでは「ラク&エコ」と称して、ラベルを剥がす手間がないことなどのメリットを可愛いイラストと共に動画で伝えています。商品のパッケージデザインと共に企業姿勢を伝える、まさに今の時代に沿った好例と言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

事例③ 【特別賞】SARAYA ハンドラボ 手指消毒

続いてはラベルレスではなく、ラベルを剥がすパッケージ「ハンドラボ」という消毒液の事例です。恥ずかしながらSARAYA(サラヤ)という大阪のメーカーは初めて聞いたのですが、この商品はコロナ禍の薬局などでよく目にしました。「ハンドラボ」は、食品衛生などプロの現場で貢献する感染予防のSARAYAが手がけた手指衛生シリーズとのこと。この商品がユニークなのは商品ラベルを剥がすとシンプルなデザインボトルに変身する点です。半透明のボトルに直に印刷されたシックなデザインはインテリアに良く馴染み、自宅や事務所での利用シーンの邪魔になりません。受賞となった「特別賞」はラベル自体の意匠ではなく、購入者の利用シーンを想定した配慮に対しての評価ではないでしょうか。

海外の商品パッケージはどれもお洒落なのに… そんな声を聞いたことはありませんか?日本の商品パッケージはPOP的な役割を担っていると言われます。パッケージデザインが、店頭でいかに目立つか、また商品特性が瞬時に伝わるかに重きを置いているからです。メーカー側の「手に取って欲しい」「売れて欲しい」という思いが強く反映された結果、家に置くと主張が強すぎるデザインになることが多いようです。SARAYA(サラヤ)の担当者によれば、商品性能を消費者に分かり易く伝えるために訴求ポイントを大きく明記したとのこと。普通ならその点に注力し過ぎてしまい「消費者目線」を忘れがちなところですが、本商品に関しては違ったようです。消費者調査で分かったパッケージデザインに対する消費者が感じている「不満」にも正面からアプローチした結果、「性能がしっかりと伝わること」「生活に馴染むこと」のふたつを同時に実現させたのが購入前と購入後でデザインが変わる「変身ボトル」というわけです。

 

 

【参考】ラベルを剥がすことを前提とした「変身ボトル」は他にも

・金鳥 コックローチ ゴキブリがいなくなるスプレー(2018年)
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00082/00002/

・アース ゴキブリ用エアゾール「ゴキジェットプロ」他(2019年)
https://corp.earth.jp/jp/news/2019/0214-07.html

・牛乳石鹸共進社 ミルキィボディソープ やさしいせっけんの香り ポンプ(2020年)
https://www.milky-bodysoap.jp/products-liquid/

 

 

 

今回のまとめ

いかがでしたか?今回紹介した事例は環境やユーザーへの配慮に関する取り組みです。パッケージデザインの善し悪しは消費者の共感を得るためには避けて通れません。また、今後も環境と利便性の観点からもこのような動きは益々拡大していくでしょう。このような「シンプルラベル」「ラベルレスボトル」を展開しているメーカーによると、「環境に良い」「ラベルを剥がす手間がなくて便利」といった好意的な感想の購入者が多いようです。今や環境問題に取り組まないブランドは時代遅れと認識されます。今回は飲料、日用品メーカーの事例でしたが、スポーツブランド、衣料品ブランドなどの各社も環境への取り組みを始めています。環境問題への取り組みはブランドの成長にとって避けては通れないことなのです。パッケージデザインを考える際は、今回ご紹介した事例を参考にしてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

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