ユーザーインサイト|モノの強みより、コトの意味
この10年でよく耳にするようになった「ユーザーインサイト」。商品やサービスの開発から、広告活動・販促活動においても重要なベースとして認知されています。お客さんについてより深く知ることは、業種や事業規模にかかわらず全ての仕事に共通してとても大切です。ユーザーインサイトにしっかり向き合うことで、あなたが知らなかったニーズを見出だせるかもしれません。
1.ユーザーインサイトとは
2.実感を持って知ること
3.モノの強みより、コトの意味
1.ユーザーインサイトとは
インサイト(insight)は洞察を意味します。洞察とは、物事を観察し、その本質や奥底にあるものを見抜くこと。つまり「消費者自身が気付いていない本音」のことで、潜在意識にも満たないものです。したがって、今現在その商品やサービスを利用していなくても「消費者自身が気付いていない本音」を抱えている人はユーザーに含まれます。
2.実感を持って知ること
ユーザーインサイトを知る手段として、一般的に以下の5つが挙げられます。
・データ解析ツール(GoogleアナリティクスなどでWebでのユーザーの動きを把握するもの)
・ヒートマップ(Webページの読まれている部分や多くクリックされる箇所が分かるもの)
・インタビュー、アンケート(利用者に直接伺うこと。インターネット調査会社に依頼するなどの手法がある)
・Q&Aサイト(ヤフー知恵袋やおしえてGoo!など、人々の質問や悩みなどを投稿するサイト)
・ソーシャルリスニング(SNS上での人々のやりとりを収集すること。問いかける(Asking)のではなく、自然な会話を傾聴する(Linstening)のでユーザーの本音を把握できる)
ユーザーインサイトを知る手段はオンラインを活用したものが主流です。しかし、これは入り口に過ぎません。実際、ターゲットのインサイトを身を持って知らないことには、本当の意味でニーズを満たせないからです。それがどんな人のどんな本音を満たせるのか。商品やサービスの開発時や、宣伝や販促の企画の際も深掘りしてみてください。作り手の自己満足に終わっては、本末転倒です。
実感を伴ってユーザーインサイトを知るには、あなた自身がターゲットになりきって1日の生活を体験したり、家族や親しい人がターゲットに該当するのであればそのような人に話を聞いたり、行動を観察することも有効です。さらに、なぜそう言ったのか、なぜその行動をとったのかを考えることで「消費者自身が気付いていない本音」が見えてきます。偏りをなくすためにも、複数人の具体的な本音を聞くことで然るべき形が見えてくるかもしれません。
3.モノの強みより、コトの意味
自分たちが売りたいものをターゲットへ伝えるとき、売りたいものの特徴や自社の強みに偏っていませんか? それらも立派なセールスポイントで伝えるべき事柄ですが、軸にしてしまうと危険です。
エナジードリンクがあるとしましょう。あなたはまだそれを飲んだことがありません。世界中で親しまれ、効果があると評判もよく、同僚も愛飲しています。ですがあなたはそのエナジードリンクを飲もうと思える動機が今までなかったため、手に取ることがなかったのです。
そんなあなたは、どんなきっかけがあればエナジードリンクを飲もうと行動に移すでしょう? それこそがあなた自身の「消費者自身が気付いていない本音」。その眠った本音を引き出すのです。
エナジードリンクの企業はターゲットの生活を徹底的に調査し、ターゲットの生活に入り込むアプローチを考えます。会社員が仕事前に気合いを入れる1本でありたいなら、会社員が仕事前に気合いを入れる場所・時間・言葉に則った広告になるはずです。こうしてターゲットに近づくための「解」へ筋道を立てていきます。
「〇〇成分〇mg配合! 世界中を元気にするエナジードリンク」
というコピーを朝8時のTVCMではなく、
「職場の扉を開ける前に。君の背を押す小さな巨人」
というコピーを朝8時の通勤電車で目にするように設計するのが効果的だと判断できます。近年の広告を見ると、「皆さんを〜」と万人に対してではなく「あなたを〜」と個人に宛てたアプローチが多いように思います。成分や世界中で愛されていることは二の次のアピールポイントですね。
企業が商品価値をただ伝えるのではなく、商品によってどう生活の価値を高めるのかを伝える時代です。ユーザーに支持されるためにユーザーの「心」をよく知り、寄り添える存在を目指していきましょう。