マーケティング心理学 |バンドワゴン効果とスノッブ効果

家電を買いに行ったとき、種類や機能の多さに圧倒されて迷ってしまうことはありませんか?そんなとき「売れ筋No.1」「当店で一番売れてます!」と書かれたPOPを見ると、つい選んでしまう。これは「バンドワゴン効果」と呼ばれる、“多数=価値”という心理が働いているためです。
1.ヒット商品をつくり出すバンドワゴン効果とは?
バンドワゴンとは、パレードの先頭で楽隊を乗せて走る大きな荷車のこと。行列がその後ろについていく様子から、多数派に流される心理現象を「バンドワゴン効果」と呼びます。
心理学では「同調効果」ともいい、たとえば路上で数人が空を見上げていると、通行人の多くも同じ行動を取ることが実験で明らかになっています。人数が増えるほど同調は強まり、特に判断に自信がないときや流行に敏感な人ほど影響を受けやすいのです。
「人気No.1商品」や映画の「全米が泣いた」というフレーズ、SNSでの「話題沸騰」なども、この効果を利用したものです。つまりバンドワゴン効果は、顧客に安心感と価値を感じてもらい、購買を後押しする心理テクニックといえます。
マーケティング活用法
「多くの人が選んでいる=安心・人気」という心理に基づくバンドワゴン効果は、マスマーケティングや購買の後押しとして非常に有効です。
1.No.1表記や実績の見せ方
「当店人気No.1」「累計販売○○万個」など、実績を視覚的に打ち出すことで、多くの人が選んでいるという信頼感を与えます。
2.レビュー・口コミの強調
ECサイトや商品POPで、ユーザーのレビュー数や評価を明示することで、「みんなが買ってる」「評判がいいから安心」という印象を強めます。
3.SNSやメディア露出の訴求
「○○で話題!」「インフルエンサー愛用」などの第三者からの支持を見せることで、多数派に属する安心感を提供します。
4.ランキング表示・ベストセラータグ
サイト内ランキングや売れ筋アイコンなどを設置し、迷う人の背中を押す判断材料として活用できます。
活用時の注意点(景品表示法との関係)
バンドワゴン効果を意図的に活用する際には、表示の根拠や表現に注意が必要です。
1.「No.1」「人気商品」表記は必ず根拠を明示
たとえば「売上No.1」には、期間・対象・調査機関などの根拠表示が必要です。根拠がない場合は「自社調べ」などと記載しても不十分となり、景品表示法違反になる可能性があります。
2.レビュー・口コミの操作は厳禁
実際には投稿されていない口コミや、サクラレビューの掲載は不当表示に該当します。信頼を損なうリスクもあるため、真実性を保つことが重要です。
3.「話題沸騰」「爆売れ」などの曖昧表現も要注意
明確な数字や根拠が示せない場合、「多数=価値」を匂わせる表現には誤認の恐れがあります。景表法の観点で問題となる可能性があるため慎重に。
2.相反する心理「スノッブ効果」とは?
一方で、バンドワゴン効果とは逆の心理も存在します。それが「スノッブ効果」です。
「まだ知られていない名店を知りたい」「ハイブランドを手に入れたい」「無名のアーティストを誰より先に発掘したい」──そんな欲求はありませんか?これは「人と同じものは欲しくない」「自分だけの特別なものが欲しい」という心理です。
スノッブ効果の背景には「他者と差別化したい」という気持ちがあります。周囲が持っていない商品やまだ社会で認知されていない商品ほど興味を引き、購買意欲を高めるのです。
ビジネスシーンでは「地域限定」「期間限定」「1日10個限定」などの希少性訴求が代表例。手に入りにくいからこそ価値が増し、消費者の特別感をくすぐって購買を促しています。
マーケティング活用法
「他人と違うものを持ちたい」「特別でありたい」という欲求に訴えるスノッブ効果は、高価格帯商品やブランディング戦略において有効です。
1.限定販売・シリアルナンバー入り商品
数量限定・期間限定などの要素を付与することで、所有すること自体に特別な価値を感じてもらえます。
2.地域・チャネル限定などの「入手困難性」の演出
例えば「直営店舗限定」「名古屋エリア限定」など、希少性を高める施策でプレミア感を出すことができます。
3.プレミアムモデルの用意
通常品とは異なる素材や仕立て、付加価値を加えた「上位商品」を用意することで、他と差をつけたい層への訴求が可能です。
4.ブランドストーリーの訴求
歴史・作り手のこだわり・生産背景などのストーリーを伝えることで、「わかる人にしか伝わらない価値」を印象付けます。
活用時の注意点(景品表示法との関係)
スノッブ効果は希少性を活かす施策が多いため、特に以下の点に注意が必要です。
1.「限定」表示の明確化が必須
「限定」と書く場合は、その範囲(数量・期間・地域など)を具体的に記載する必要があります。たとえば「限定販売」とだけ書くと誤認表示となる可能性があります。
2.実際には限定でないのに“限定”を装うのはNG
販売計画として数量制限を設けていないにも関わらず、「残りわずか」などと表示するのは景表法違反になることがあります。
3.高額商品の価値訴求にも根拠を
「希少素材を使用」「職人仕立て」などの文言も、裏付けとなる情報が必要です。事実と異なると判断されれば指導・措置命令の対象に。
4.「○○専用」など排他性を強調しすぎない
他社や他商品を意図的に下げるような表現(例:「他の○○とは違う本物の〜」)は、不当な比較広告として指摘されるケースがあります。
逆のようで実は両立する心理
相反する2つの心理ですが、研究によると「個性を重視する人ほど、同調傾向も高い」という結果が示されています。つまり私たちは「人と同じで安心したい」という気持ちと、「人と違うことで特別でありたい」という気持ちを同時に持つ矛盾した存在なのです。そう考えると納得できますよね。
まとめ
今回紹介した「バンドワゴン効果」と「スノッブ効果」は、特にBtoCビジネスで有効な心理です。消費者が商品やブランドを選ぶとき、他人の影響を全く受けない人はいません。
消費が多様化する今だからこそ、こうした心理を理解することで新たな販促の切り口が見えてきます。ぜひマーケティング戦略に活かしてみてください。
> 関連記事
NEXT
「マーケティングと行動心理学 その5―ザイオンス効果―」
BACK
「返報性の原理」とは?ビジネスシーンで活用する方法