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マーケティングと行動心理学 その4―バンドワゴンとスノッブ効果―

家電などを買いに行った際、その種類や機能の多さに圧倒されてしまい、どれを選んでいいか迷ってしまうことがありませんか?そんなとき、店内のPOP広告に「売れ筋No.1」「当店で一番売れてます!」などと書かれていたりすると、ついついそれを買ってしまうことってありますよね?これは「バンドワゴン効果」と呼ばれる「多数=価値」という心理が働いているからです。

「バンドワゴン効果」とは?
相反する効果「スノッブ効果」
相反する2つの効果、しかしその実態は!?
今回のまとめ

バンドワゴン効果とは?

バンドワゴンとはパレードの先頭をゆく楽器隊(バンド)を乗せて走る大きな荷車(ワゴン)のこと。パレードでは、このバンドワゴンの後ろに行列がぞろぞろとついていきます。その様子が「多数派の意見についていく大衆」の姿に例えられ「バンドワゴン効果」という名称が生まれました。また、心理学的には「同調効果」ともよばれており、実験によれば、路上で3人の仕掛け人が意味もなく空を見上げていると、そこを通る人の60%が同じように空を見上げる行動をとることが分かっています。見上げる人数が増えればそれに比例して同調効果も高くなることや、自分の判断に自信がないときほど、また流行に反応しやすい人ほど同調しやすいことも実証されています。ビジネスへの活用方法としてキャッチコピーに反映させることが効果的です。冒頭でも触れた「人気No.1商品」や映画などで見かける「全米が泣いた」というのもこの効果を利用しています。他にも、TwitterやInstagramなどのSNSにおいてもバンドワゴン効果は日常的に潜んでいます。例えば、Instagramでいいねが多いカフェの写真を見つけると、興味がわき、どういうカフェなんだろう?という気持ちから行ってみたくなるはずです。このようにバンドワゴン効果とは顧客に商品の価値を認めてもらい、安心して購入してもらうのに効果を発揮する心理テクニックです。

相反する効果「スノッブ効果」

人の同調効果を刺激するバンドワゴン効果を紹介しましたが。私達の心理にはまったく逆の意味を持つ効果が存在します。自分らしさにこだわる心理「スノッブ効果」です。スノッブとは「教養のある人間のように振る舞おうとする俗物。えせ紳士」と定義されており、自分の知識や優越性をひけらかしてくる気取った感じの人。というイメージです。言葉にすると少し嫌味に聞こえますが、これも誰もが少なからず持っている心理です。例えば「世間であまり知られていない名店を知りたい」「ハイブランドの服が欲しい」「まだ無名のアーティストを誰より先に発掘したい」などと思ったことはありませんか?こうした「人とは違うものが欲しい」という心理、または「みんながもっているものなら欲しくない」という心理こそが「スノッブ効果」なのです。スノッブ効果が作用する仕組みには人間の「他者と差別化したい」という心理が関係しています。 多くの人間は「個性的でありたい」という欲求を抱えており、また他者からの視線を気にするため、同じ物を持つことや買うことに抵抗があります。そのため、周りの人があまり持っていない商品や世間に多く出回っていない商品に対する購入のモチベーションは高くなる傾向にあります。また、販売個数が少ない商品やまだ社会で認知されていない珍しい商品であればあるほど、その商品の性能や使い心地に対する興味は高まり、好奇心による購買行動につながります。ビジネスシーンにおいてスノッブ効果の現れる代表的な例に「地域限定」「期間限定」といった希少性をアピールする方法があります。他にも「1日限定10個」「10台限定入荷」といった宣伝は、消費者の心理にある「差別化したい」という欲求や手に入りにくい商品を手に入れたという欲求をかきたてます。これらは商品そのものの価値はさることながら、商品の購入機会の希少性や商品を買うことで得られる特別感を消費者に訴求することで商品の価値を高め、購買を促しているといえます。

相反する2つの効果、しかしその実態は!?

ヒット商品をつくり出す「バンドワゴン効果」。自分らしさや個性を大事にしたい「スノッブ効果」。まったく逆の意味をもつ心理効果ですが、とある研究グループの調査によると、個性重視の「スノッブ効果」が高い傾向の消費者ほど、他人と同調しようとする「バンドワゴン効果」も並行して高いということが分かったというおどろきの結果を発表しました。本来、個性を求めるタイプは他者への同調はしないと思われがちですが、モノを買う消費行動においてはこの対立的な見方は誤りで、個性を重視することと多数派へ同調する傾向は相互に関連しているということを理解しておく必要があります。学術的に見るととっても複雑に見えますが、つまり私たち人間は、人と同じことをして安心したいという気持ちをもつと同時に、人と違うことをして自分の個性や優越性を確保しておきたいという気持ちも合わせもっている矛盾に満ちた生き物ということです。これならなんだかうなずけますね。

今回のまとめ

今回紹介した「バンドワゴン効果」と「スノッブ効果」は、特にBtoC向けのビジネスを行っている企業にとって有効です。人々が商品やブランドを選択する際に、他人の影響を受けないということはありません。多かれ少なかれ、他人の目を気にしています。消費の多様化といわれる昨今ですが、裏側でこうした心理が働いていると考えれば、解決の糸口が見つかるかもしれません。これら心理効果を駆使して切り口の異なる販促戦略にお役立てください。

 

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