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デザイン思考 – やわらかく考える①

日本人には、ものごとをついついカタく考えてしまう人が多いそうです。私自身、もっとやわらかく考えられたら、より気持ちよく生活できそうなのになあ〜と漠然と思うことがあります。ここでいう“やわらかい”はものごとをふわっと考えている、ということではありません。やわらかく考えるとは、「冷静に、素直に、考えること」です。デザインにおいても「やわらかく考えること」はとても大切です。ひょっとすると、自分にとっての”おもしろい”はだれかにとっては”わかりにくい”かもしれません。デザインを制作していると、できない理由を考えすぎて行き詰まったり、1つの考えに固執して視野が狭くなってしまう、なんてことがあるかもしれません。そんなとき「ちょっと待った!」と自分を呼び止めるような気持ちで、一旦あたまのスイッチをオフにして、落ち着きましょう。今回のコラムでは、あたまをやわらかくすることで気付けることについてお話できればと思います。リラックスして読んでください。

1. 新たな問いかけと可能性
2. ひらめきとは「気付き」
3. 1回考えなおしてみる
4.今回のまとめ

1.世界が広がる新たな問いかけ

みなさんは、自分たちが日々「あたりまえ」だと思っている習慣や感覚が実は「異常」かもしれない、と考えたことはありますか?たとえば、「電車でお年寄りに席を優先的に譲る」という行為。多くの方がお年寄りの体を気遣ってそのような行動を取っており、それが“良いこと”だと思われています。しかし、それは本当に良いことなのでしょうか?お年寄りによってはその気遣いが“失礼”に感じる方もいます。また、お年寄りではなくても、実は体調が悪くて座っている、という方もいるかもしれません。このように「これって本当に良いこと(もの)?」「もしかすると〇〇かもしれない」と“あたりまえなこと”として処理されていることに改めて疑問を持つことや、さまざまな可能性をさぐることはデザインをする上でもとても大切です。「このデザインが良いんだ!」と、ものさし1本で突っ走ってしまうのではなく、クライアントの意向や、流行、同業種の方の視点、自分なりのこだわりなど、いろんなものさしを使って視野を広げ、新たな選択肢を生み出しましょう。

 

2.ひらめきとは「気付き」

よく「いい考えが思いつくこと」を“ひらめき“といいますが、それはだれも気づいていなかったことに“気づいた“ということです。気づけるということは、それだけ“よく見ている“ということ。それは、先ほどお伝えした「ものさし」の種類の多さでもあり、さまざまな視点からものごとを見て、その背景を考えることではじめて可能性に気づくことができるのではないでしょうか。プロのデザイナーさんの制作物を見ていると、「この人のアイデアはどうしていつもこんなにおもしろいのだろう?」と思うことがあります。あるとき、いつもデザインを拝見しているデザイナーさんから面白いアイデアを生み出すためにされていることを伺う機会がありました。その方のアイデアの基は「常に妄想して、その中で色んなものを組み合わせてみること」なのだそうです。妄想ができるということは、それだけ膨らませられるアイデアの種をたくさん持っているということ。デザインを考えるとき、ついついネット上で参考になりそうなデザインを探してしまいがちですが、1つ場所から生み出せるアイデアには限りがあります。視野を広げ、気づきを増やすためにも、時にはパソコンから離れて、実物を見て触ったり、デザイン以外のことへゆっくりと考えを巡らせる時間をつくるよう意識してみると良いかもしれません。

 

3.1回考えなおしてみる

デザインを制作していると、クライアントの意向が制作当初と変わってしまったり、世の中の事情によって変更せざる負えないときがあります。そんなときみなさんならどんなことを考えますか?不安や焦りが先走り、とにかく手を動かそうとする方も多いのではないでしょうか?しかし、そんなときこそ“あたまをやわらかく“です。どんなデザインにもラフ案が存在します。しかしほとんどのデザインがラフとはどこかしら違った形で着地しています。それは制作過程でデザインを吟味し、必要に応じて考えなおしたからです。このように、望むような結果にたどり着くまで考えなおすことは実は自然とできていたりします。デザインを考えなおすときもそれは同じです。ではなぜなかなかうまくできないのか?それは制作に向かうときの気持ちが影響しているかもしれません。やわらかく考えられるとは、どのような状況においても同じ答えが導き出せるということでもあります。制作に行き詰まったときや、焦りがちなときは、制作物との距離をフラットにして「このデザインを見た人はどんな感想を抱くのか」を冷静に自由に考えてみましょう。

 

4.今回のまとめ

「やわらかく考える①」はいかがでしたか?あたまが少しでもやわらかくなったでしょうか?今回の記事では、日々デザインと向き合うなかで、感じていることや気づいたことを基にお話させていただきました。私はデザインは大きく分けて3つの価値に分けられると考えています。1つ目は“デザイナーに称賛されるもの“、2つ目は“クライアントに称賛されるもの“、そして3つ目は“世間に称賛されるもの“です。良いデザインとはその3点が心地よく調和した状態にあるのではないかと思います。しかしなかなかそのバランスを図るのは難しく、未だに思い悩むこともあります。少しずつ、少しずつ、あたまをほぐしていきたいです。