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デザイナーの武器となる〇〇力 -その2-

みなさんは「主役」と聞くと何を思い浮かべますか? 映画やドラマの主人公、料理のメインディッシュのように、ものごとの中心となるような、ひときわ目立っている存在を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。デザインにおいてもそれは同じで、最も目を引きたい、目立たせたい要素に対して「主役」と呼んだりします。目立たせる方法としては、サイズを大きくしたり、特徴的な色を使ってみたり、変わった文字を使ったりという方法が一般的で、身近なものだとSNSの投稿や動画などからその特徴がよく伺えます。しかし、目を引くものとは、ただ派手であるものだけではありません。グラフィックデザインでは、これも目立たせ方のひとつだったのか!と思うような、さまざまな工夫が施されています。今回は「見極め力」(デザイナーの武器となる〇〇力 -その1-)で見つけた主役を、誰が見ても「主役だ!」とわかるように見せるための「目立たせの小技」について、方法ごとにお話しさせていただきます。

1. 色で目立たせる
2. 地で目立たせる
3. サイズで目立たせる
4. 余白で目立たせる
5. 揃えないことで目立たせる
6. 今回のまとめ

1.色で目立たせる

基本的に、白・黒・グレーなどの無彩色よりも、なんらかの色味(有彩色)がある方が目立ちやすいです。ただし、目立たせたいからといって色を使いすぎてしまうと、今度は色があることが「ふつう」になってしまうため、かえって特別感が出なくなります。主役、脇役、そのさらに脇役となる要素をぱっと見で迷わず判別できるよう、使用するのは3色、多くても5色ほどが望ましいです。また、数だけでなく、色を使用する量(面積)やどんな色を使用するかも目立ち具合に影響するので、色の組み合わせや割合には注意しながら、必要最低限の数と量を使用するように意識すると良いでしょう。色が少ない場合は足し算で、少ない場合は引き算で目立たせるのがポイントです。

 

2.地で目立たせる

デザインには「図と地」という概念があります。図はかたちのあるものを指していて、配置した際に手前に出てきやすいです。その図の背景にあたるのが地で、奥にあるように感じられやすい性質があります。例えば、図に意識がいくと地への認識は弱くなります。つまり反対に、地に意識がいくと図への認識は弱まります。この性質を活かしたのが地を目立たせる方法です。もともと図にしか色がなかったところへたったひとつ「地」があるだけで、ほかへの意識が弱まり、主役となる要素が浮かびあがります。地を作ることで図の主張を弱め、図を作ることで地を弱める、てんびんのような相関関係が特徴的です。

 

3.サイズで目立たせる

画面に占める面積は重要度と比例します。目立たせたい要素を単純に大きくするのも、もちろん有効な方法です。面積を占める割合が多いほど目立ち、重要度が高く見えてきます。しかしデザインによっては、脇役となる要素のサイズがそもそも小さい場合もあり、そこで主役をドンと大きくしすぎると他の要素が入ってこなくなってしまいます。どのくらい大きくしたら「主役」に見えるのか?そのバランスは「脇役」が握っています。ただ大きくするのではなく、周りの要素のサイズ感に合わせて、主役を大きくしていくと良いでしょう。逆に、脇役の存在感が強いときは、やり過ぎなくらいに大きくして、主役をドカンと目立たせましょう。

 

4.余白で目立たせる

私たちの脳の神経細胞には、おおまかな空間に反応する細胞と、細かい情報に反応する細胞の2つがあるそうです。そのため、おおまかな空間認識でも分かる「差」のほうが認識されやすいのだとか。たしかに、隅々まで同じテンションで情報が詰まった資料よりも、項目ごとに間隔が設けられているなど、余白があることによって文字が見やすく感じることってありますよね。例えば下図のように、境界線を入れるより、余白で作った境界線のほうが分かりやすいのは、細かい情報が見えなくてもぱっと見で違う情報だと区別できるためです。離れたところから眺めるとその差がよく分かるため、埋もれた主役の救出に役立ちます。遠目やちらっと見たときなど、おおまかに眺めても分かるくらいの余白を作ることがポイントです。

 

5.揃えないことで目立たせる

脳の神経細胞は異なる方位に対して良く反応する性質を持っているそうです。“まっすぐ”に反応する細胞と“ナナメ”に反応する細胞があり、それぞれが別々に処理されるために、異なる方向性の要素は違うものとして目立ちやすくなります。ただし、ある程度の規則性があるからこそ、初めてイレギュラーであることが効果を生み出すのです。最初からランダムに配置するよりも、基本ルールを作ってから崩したほうが、バランスを取りやすくなります。まっすぐにはナナメを、整列にはズレを、という意識で、デザインの中にこれは統一する、というルールを作ってからあえて崩すという方法も目立たせの小技のひとつです。

 

6.今回のまとめ

今回ご紹介した「目立たせの小技」はいかがでしたでしょうか?これまで何度か訪れた「こうすればなんだか目立つぞ!」という感覚には、こんな理由があったからなのか〜という納得感や、「たしかにこうすれば目立つなあ〜!」といった発見が今回の記事から少しでもお届けできたらうれしいです。デザインの目立たせ方に困ったときは、ぜひ参考にしてみてください。私も目立たせ方に迷ったときは初心に戻る気持ちで参考にしようと思います。

 

 

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参考書籍
なるほどデザイン