デザイナーの武器となる〇〇力 -その1-
「グラフィックデザインとは?」第2章「デザイナーの武器となる〇〇力」についてお伝えしていきます。「〇〇力」とは、例えば判断力や連想力、表現力など、より良いデザインにするために役立つ力のことを指しています。今回はデザインを始める前に必要な情報整理の時間で役に立つ「見極め力」についてお話します。デザインを考えるとき、まずはじめに情報の優先順位を決めます。「伝えたい量」と「伝わる量」はイコールではないため、「伝えたいこと」を絞り込む必要があります。言いたいことが多すぎると情報同士がケンカになり、結局なにを伝えたいのだろう…と、表現がどんどんぼやけてしまいます。あれもこれもそれも、全部入れたい!と欲張った結果、要素が多くごちゃついてしまい、見てほしくて作り出したはずのものが、逆に見る気を失わせてしまうかもしれません。そんなもったいない結果にならないために、情報を見極めることはとても大切なのです。
1. 伝えたいことを整理する
2. どっちがより大事かを見極める
3. 大事な方を強調する
4. 今回のまとめ
1.伝えたいことを整理する
街で見かける広告物はすべて「伝えたいこと」でつくられています。伝えたいこととは簡単に言うと発信者の「メッセージ」です。例えば、街で有名なドーナツ店が期間限定のドーナツを販売するとします。伝えたいこととしては、「限定品ならではの特別感のあるビジュアル」「限定品なのに価格がお手頃」「バリエーションが豊富で色んな味を食べてみたくなる」「特典がついてくる」などいくつかの特長が思い浮かびます。それらの中から、今回最も訴求したいポイントは何なのか?どんな見せ方をしていきたいのか?伝えたいことの中で特長が共通しているものはないか?情報の優先順位を考えながら必要なものや重要なものを見極めて、伝えたいことを絞り込んでいきます。そうすることで、より強いメッセージが浮かび上がってきます。
2.どっちがより大事かを見極める
伝えたいことの方向性が絞り込めたら、次はそれらをさらに天秤にかけて見極めていきます。「季節(期間)限定」は販売期間を伝えることで「今しか食べられない」という希少性を感じさせ、商品の選択に影響を与える必要な情報です。そして「キュートなラインナップ」はドーナツの魅力を伝え、他の商品と差別化する役割を持つ重要な情報となってきます。はたしてどちらが大事なのか?と言われるとどちらも商品のアピールに欠かせない大事な情報なので判断に迷いますよね。そんなとき、何を決め手(重視)にすると良いのか?それは「見る人のこころを動かせるかどうか」なのではないかと思います。最も自社の魅力を知る発信者が伝えたいことももちろん大切ですが、それを見て判断をするのはどんな時も自分ではなく「見る人」です。だからこそ一方通行な内容ではなく、受け取り手の気持ちを考えることでより興味を持ってもらえる、他と差別化ができる情報を発信し、しっかりと魅力が伝わるビジュアルを作り上げることが大切です。
3.大事な方を強調する
この広告の目的は、いつもお店に来てくれる人へのお知らせであると同時に、普段お店を訪れない人も思わず食べてみたくなるような、期待感をふくらませる、気になる内容であることです。そこで今回は「キュートなラインナップ」を大きくアピールしたうえで、しっかりと「季節(期間)限定」であることを謳うビジュアルにしてみました。「キュートなラインナップ」のほうが大事であると判断した理由は、季節(期間)限定という訴求はあらゆるお店が実施しているため、他と差別化する要因としては少し弱くなってしまいます。対して、このお店ならではの企画の魅力が伝わる「キュートなラインナップ」は「今このお店がこんなかわいいドーナツ出してる!」「この組み合わせ素敵だな」「私はこのドーナツが食べてみたいかも」などの話題性につながり、「見る人のこころを動かせる」のではないかと考えました。
4.今回のまとめ
今回はデザイナーの持つ「見極め力」について自身の考えも交えながらお話させていただきました。デザインをするということは、ただオシャレなビジュアルをつくるという単純なことではありません。発信者と受け取り手の気持ちを深く理解したうえで、大小様々な情報がある中から本当に必要な情報を選び出し、内容の良さを引き出すための最適な見せ方に工夫を凝らし、やっとひとつのデザインが誕生します。制作する中で「このデザインが正しいのだろうか」と悩むことがあれば、「このデザインは見る人のこころを動かせるだろうか」と考えてみると判断しやすいかもしれません。みなさんもぜひ、自身の「見極め力」について考えてみてください。
参考書籍
なるほどデザイン