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エディトリアルデザインで知っておきたい基礎知識 -3-

広告に交通案内、雑誌に新聞、パッケージ、書籍にウェブなどなど、誰しも必ず毎日目にする「文字」。これらは単に文字を入力しているのではなく、実は「文字組み」という多くの知識と技術が必要なデザインなのです。先回(エディトリアルデザインで知っておきたい基礎知識 -2-)に続き、エディトリアルデザイナーを目指す方、デザインを勉強中の学生の方、仕事でイラストレーターを使用する方にぜひ覚えてほしい知識をまとめました。

1.文字組みの心構え
2.基礎知識⑦書体選び
3.基礎知識⑧文字サイズ
4.基礎知識⑨字間・行間文字組みの心構え

 

本題に入る前に筆者が考える「文字組みの心構え」をお伝えします。デザイナーにとっても原稿の執筆者にとっても、自身が作ったものは最後まで読んでほしいものです。記載された文を最後まで読み切ってもらうために、以下の「文字組みの心構え」を胸に刻み、デザインに取り組みましょう。

文字組みの心構え
読者が流れるように読めるよう、目の動線を意識すること。
対象となる読者の年齢と、読むシチュエーションを考慮すること。
違和感・読みづらさを感じると、内容がどんなに素晴らしい文章であっても読むことを止めてしまうということ。

基礎知識⑦書体選び

書体を選ぶとき、“何となく“で選んでいませんか? 日本語書体は、大きく分けると「明朝体」「ゴシック体」「筆書体」「デザイン書体」の4つがあります。ここでは日本語書体で代表的な明朝体・ゴシック体について改めて考えてみましょう。

明朝体

中国の「明」の時代にできたといわれている明朝体。木に彫るための文字として作られたそうです。

明朝体の特徴
・可読性に優れている
・縦書きの長文に向いている
・縦線が太く横線が細い
・うろこと呼ばれる三角形の山がある
・はらい、はねの画は先端にかけて細くなる

明朝体が与える印象
・上品
・伝統的
・和風
・丁寧

 

ゴシック体

19世紀前半からアルファベット書体で主流になっていた「サンセリフ体」に影響されて誕生したとされるゴシック体。活版印刷の技術の進化とともにゴシック書体のデザインも増えていきました。ゴシック体から展開された「丸ゴシック体」もポピュラーですね。

ゴシック体の特徴
・視認性に優れている
・短文に向いている
・線の太さが均一
・書体のデザインが多いゴシック体が与える印象
・カジュアル
・安定感
・親近感

 

ウェイト
同じ書体でも細いものから太いものまであります。この太さのことを「ウェイト」と呼びます。細いウェイトは繊細さや軽やかさがあり、太いウェイトは力強さや主張力があります。見出しはヘビーウェイト、本文はレギュラーウェイトが基本ですが、基本が身に付いたら与えたい印象によってウェイトを決めてもよいでしょう。

UDフォント
「ユニバーサルデザイン」の書体があるのを知っていますか? 誰にとっても読みやすく作られた書体です。2024年から新しくなる紙幣の「10000」「5000」「1000」の文字がユニバーサルデザインフォントがなっており、今までの紙幣とは違った印象を感じるはずです(参考:https://www.fnn.jp/articles/-/7427)。近年では駅や公園の看板など、公共の場でユニバーサルデザインフォントを見かけるようになりました。読者層を考慮したうえでUDフォントを取り入れるとよいでしょう。

基礎知識⑧文字サイズ

イラストレーターでは「級(Q)」「ポイント(pt)」という単位で文字の大きさを表します。

年齢に対する文字サイズの目安(本文の場合)
●幼児・・・14〜22pt
●小学生・・11〜17pt
●大人・・・7〜9pt
●高齢者・・9〜11pt

役割による文字サイズ
大見出し>小見出し>本文 の順で文字サイズやウェイトにメリハリをつけます。
この順序は読者の興味を喚起させる順になりますので遵守しましょう。同じ文字サイズであっても書体によって大きさが異なる場合があります。紙媒体のデザインは画面上だけで文字サイズを判断するのではなく、実寸でプリントアウトして確かめることが大切です。思ったよりも小さい・大きいといった発見があるはずです。

基礎知識⑨字間・行間

文字組みの中でも重要なのが「字間・行間」。適度な字間・行間で読者が心地よく読めるように心がけましょう。字間・行間は読む所要時間と与えたい印象をコントロールすることができます。ゆったり読んでほしいなら字間・行間にも余裕を持つ、忙しいビジネスパーソンに読んでほしいなら字間・行間を狭くする、このようにコントロールします。いかなる場合も読みやすいことが前提であることを忘れずに。
イラストレーターでは「メトリクス」「オプティカル」「和文等幅」という自動的に字間を整える機能があるので活用し、最終的に自身で調整しましょう。雑誌や新聞は媒体によって字間・行間のルールが定められていることもありますので、その場合はルールに沿います。

まとめ

デザインと文字は切っても切り離せないもの。何気なく見ている身の回りの文字も、このような知識と技術が詰まったものと知ると感じ方が変わりませんか? 世の中にはデザインされたものが無数にあります。それらをお手本にし自身のテクニックとしてアウトプットしていきましょう!

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