MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?その意味と重要性

変化が目まぐるしい現代において企業に求められるのは、共通の理念や目標を持ち進むべき指標を定めることです。
それらをわかりやすく明文化したものが「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」です。
MVVを明確にすることで、従業員の意識が統一されモチベーションを上げることができたり、顧客や取引先、そして社会全体に企業としての方向性を示すことができます。
この記事ではMVVが重要視される理由や混同しやすい「ミッション」「ビジョン」「バリュー」それぞれの違い、そして社内外に浸透させる方法を解説します。
1.MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?
MVVとは、「Mission(ミッション)」「Vision(ビジョン)」「Value(バリュー)」の頭文字をとった言葉で、経営学者のピーター・F・ドラッカー氏によって提唱されました。
企業や組織の理念を整理し方向性を明確にするための指針として、多くの企業がこの考え方を取り入れています。
MVVは、コーポレートブランディングやリクルート活動、社内文化の形成においても役立ちます。
ここで、S社という架空の企業を例に挙げて、MVVそれぞれの違いを説明したいと思います。S社は飲食店を経営しており、「和食」「洋食」「中華」という別業態のブランドを持っています。
MVVの違いをS社の例を交えながらご紹介します。
ミッション(Mission)とは
ミッションとは、一言でいうと企業が「日々達成したい使命」です。企業や組織の「存在意義」とも言われます。
社会に対してどのような価値を提供するのか、何を実現したいのかを明確にするものです。
先程のS社の例にしてみましょう。
「誰もが「おいしい!」と思える料理を提供する」をこの企業のミッションとした場合、3つの業態すべての指標となり得ます。
ミッション開発のポイントは、その企業の「特長」や「強み」「強化すべきこと」を見つけることです。
この場合の特長や強みは、必ずしも今“あるもの”である必要はありません。自社の特色や、近い未来に獲得できる長所を含めたことの中から検討しましょう。
ミッションを決める上で大切なことは、企業が「社会に対して提供したいこと」であるということです。
別業態のブランドを抱え差別化を図りながらも、一貫した存在意義を抱えることで企業としての価値観が統一されます。
ビジョン(Vision)とは
ビジョンとは、「実現したい未来」のことです。
つまり、ミッション(日々達成したい使命)を果たし続けた結果、「どのような未来を実現したいのか」「中長期的にどう成長したいのか」がビジョンです。
どれくらい先の未来かというと、 大体50年〜100年後くらいをイメージしてみてください。
こちらもS社の例でみてみましょう。「”食”で世界を平和にする」がビジョンです。
このように、ビジョンの内容は「5年後に売上5億円達成」というような近未来の社内目標というよりも、「社会が応援したくなるような明るい未来の計画」であることが重要です。
また、ミッションは企業の存在意義のため、変更することは基本的に無いのに対し、ビジョンは未来の話であることから、タイミングをみてアップデートされる場合があります。
たとえば、変化の早いIT業界などは、5年〜10年という短い期間で定期的にビジョンを見直すこともあります。
バリュー(Value)とは
バリューとは、「業務を行う際に、自分たちが何を大切にするか」です。
ミッションやビジョンを実現するための具体的な行動指針で、従業員が行動・判断する際の基準となります。
S社の例でみてみます。S社のバリューは「お客様もスタッフも笑顔になれるお店作り」です。
ミッションとビジョンを実現するために、部門にかかわらず従業員全員が心がけるべき姿勢を示しています。
2.ミッション・ビジョン・バリューが企業に必要な理由
ミッション・ビジョン・バリューの設定により、企業にとっては下記のようなメリットが得られます。
企業として一貫性を担保できる
企業は経営者だけでなく、社員や顧客、そして社会全体と関わりながら活動しています。MVVがあることで、企業の根底となる考え方が共有されるので、すべての意思決定に一貫性が生まれます。
例えば、新しい事業を始める際やブランドを拡張する際に、ミッションやビジョンに立ち返ることで「自社の理念に沿っているか?」という判断基準を持つことができます。
ブランディングの強化に繋がる
MVVがしっかりしていれば、一貫性が担保され顧客に対して信頼感を生みます。企業の姿勢や価値観に共感され、長期的なファンの獲得につながるでしょう。
また、企業独自のMVVは社会からの支持を得ることができ、競争力の強化にも繋がるでしょう。
社員の意識統一とモチベーションの向上
MVVがあることで、従業員のすべきことや目指す方向性がはっきりとし、一体感が生まれます。
また、自分の仕事が企業にとってどう貢献するのかを理解することができるので、仕事のモチベーションの向上に繋がります。
3.他社事例
それでは、みなさんがよく知る企業の事例を紹介します。
キリンホールディングス株式会社
【ミッション】
キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、『食と健康』の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します
【ビジョン】
食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる
【バリュー】
熱意、誠意、多様性
▼企業方針 | 企業情報 | キリンホールディングス
https://www.kirinholdings.com/jp/profile/philosophy/
株式会社日立製作所
【ミッション】
優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する
【ビジョン】
日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします
【バリュー】
和・誠・開拓者精神
▼日立グループ・アイデンティティ:日立
https://www.hitachi.co.jp/about/corporate/identity/
4.ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる方法
せっかくMVVを策定しても、それが社内に浸透されないのでは意味がありません。定義して終わりではなく、普段の業務でも意識すべき方向性として、積極的に従業員や外部の企業に周知していきましょう。
下記のような方法が一般的です。
・評価制度にMVVを反映させる
・社内報やWebサイトに掲載する
・名刺やクレドカードのようなツール類、掲示物に記載する
弊社「スズキモダン」のMVVは、下記のページで公開しています。
▼MVVがもたらした会社の軸
https://s-modern.com/story/6228/
5.まとめ
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を明確にすることで、さまざまなメリットがあることをおわかりいただけたかと思います。
企業が成長し社会に価値を提供し続けるために、単に売上や利益を追求するだけなく自らの存在意義を明確にし、目指す未来と大切にすべき価値観を共有することが求められています。
変化の多い時代でブレない経営判断は大切です。社員の意識が統一され、顧客や社会との信頼関係が強固なものになるでしょう。