広告事例研究|世界の広告施策から学ぶ
いよいよ今年のカンヌクリエイティブフェスティバル(期間 2021年6/21〜25)が始まりました。昨年の審査中止を受けて2年分の審査が一気に行われている形です。カンヌ史上初のオンライン授賞式をLIVE配信で楽しんでいる方も多いのではないでしょうか?もし、LIVEでは見られない場合は公式ツイッター(@Cannes_Lions)でも随時受賞作が発表されていますのでチェックしてみてください。
1.世界の広告が目指すもの
2.事例① Xbox DESIGN LAB ORIGINALS : THE FANCHISE MODEL (Microsoft Xbox)
3.事例② CHANGING THE GAME (Microsoft Xbox)
4.今回のまとめ
世界の広告が目指すもの
近年のカンヌでは戦争、平和、自殺、銃規制、地球環境問題、人身売買、差別、ジェンダー、LGBTQなど世界が注目する課題やトピックに絡めた、社会を良くすることに取り組む広告が多く受賞しています。今年は特にアメリカの黒人差別(Black Lives Matter)やCOVID-19が大きな社会問題に発展したので、それらに関する企業の取り組みに対して多くの受賞が予想されます。
このように、その時代の社会が抱える課題をどのようにクリアしたか、また企業が抱える課題にクリエイティブでビジネス的に貢献できているか、など広告の役割や領域が年々広がるなかで審査基準も毎回少しずつ変わっているのがカンヌの特徴のひとつです。受賞作に見られるように世界の広告のトレンドとしては、売上だけではなく社会問題への取り組みにまで昇華しています。これは日本の企業広告ではあまり見られないアプローチです。カンヌの受賞作を研究すると、社会貢献に対する企業態度がそのまま企業ブランディングにつながる事例が多く学べるのでおすすめです。(弊社は2019年に現地で研修を行いました。その時の様子は弊社のフェイスブックでもレポートしておりますので過去記事をぜひご覧ください)
事例① Xbox DESIGN LAB ORIGINALS : THE FANCHISE MODEL (Microsoft Xbox)
さて、今回のブログではカンヌの常連であるマイクロソフトの過去の受賞作品から2つの優れた広告を紹介したいと思います。(ちなみにマイクロソフトは、先日早速発表された2021年のクリエイティブメーカーオブ・ザ・イヤーを受賞しました)
カンヌ2018年 クリエイティブEコマース部門グランプリ
2018年に新設されたクリエイティブEコマース部門でグランプリを受賞したのは、マイクロソフトの「Xbox DESIGN LAB ORIGINALS: THE FANCHISE MODEL」です。この施策は簡単に言うと、Xboxのプレイヤーが自分だけのコントローラーを作れるサービスです。「ファンチャイズ」とはフランチャイズとファンをもじった造語で、「商品のファンに商品を販売させる」という斬新なビジネスモデルとなっています。
マイクロソフトが用意したオリジナルのカスタマイズができるコントローラーを購入すると通常のノーマルコントローラーより50%程度割高になる背景があったのを一変させたのがこの施策。売るのにハードルが高かった状況をひっくり返したアイデアが爽快です。マイクロソフトはプレイヤーがデザインしたコントローラーのデザインを自身で他のプレイヤーに販売することができ、その売上の一部を得ることができるという仕組みを考えました。映像の中でも紹介されていたように、ドナルドトランプをイメージしたデザインでも個人差があるのはユーモアがありましたね。乳がん撲滅を訴えたデザインは売上の一部を寄付すると公約したことでより多くの共感を得たようです。メーカーの手が届く範囲を超えて社会的な意味を見出した運動にまで発展したのはとても興味深いです。プレイヤーはより多くの収益を狙ってYouTubeやSNS上で積極的に宣伝を展開したことでこの施策の認知が更に拡大し本来の広告効果も高まりました。ちなみに最終的に一番稼いだ人で1130ドル程度だったそうです。ファンが儲ける仕組みがそのまま広告になったという秀逸な事例です。
事例② CHANGING THE GAME (Microsoft Xbox)
続いて紹介するのは2019年にブランド・エクスペリエンス部門とアクティベーション部門でグランプリを受賞したCHANGING THE GAME (Microsoft Xbox)です。個人的にも大好きな広告施策です。
カンヌ2019年 ブランド・エクスペリエンス部門&アクティベーション部門グランプリ
世界は平等だ。ゲームは全ての人のためにある。身体にハンデのある子供たちでも健常者と同じようにゲームを楽しめる世界を提供したいというマイクロソフトの意思を感じる広告施策です。「CHANGING THE GAME」のタイトルも秀逸で、ゲーム環境を変えるぞ、というマイクロソフトの意気込みに加えて、生まれつきのハンデに屈せず、人生を変えてやる、という子供たちの力強さを感じます。映像も上手に作られています。マイクロソフトはそのような思いで、自身が抱える身体のハンデに応じてプレイヤーが自在にカスタマイズできるゲームコントローラーを開発。Xboxのみならず任天堂など他社のゲーム機にも接続可能となっているのも本気で社会を良くしようという心意気を感じます。このCMは世界一放映料が高いとされるスーパーボウルで放映されると一気に話題となりました。
今回のまとめ
いかがでしたか?今回は世界3大広告賞のひとつ、カンヌクリエイティブフェスティバルにおける、マイクロソフトの事例を2つ取り上げました。これらのストーリーは、「すべての人にチャンスを与えるアクセシブルな技術を構築する」というマイクロソフトのコミットメントをベースとしている点がポイントです。企業のミッションとズレがないため、広告メッセージとしてとても芯の通った力強いものに感じられます。テクノロジーの発展がより良い社会作りを助けているなかで、それらと上手く連携し社会問題の解決に対して広告ができるアプローチはまだまだ多そうです。今後も世界の広告事例をお届けする予定ですのでお楽しみに。
> 関連ページ
カンヌライオンズ(公式)
https://www.canneslions.com