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売れる色|カラーマーケティングとは

「カラーマーケティング」とは、色によって人間の行動がどう変わるか、どのような影響を受けるかという色彩心理学に基づいて人々を誘導し、モノを売る戦略のことです。
私たちの日常は、たくさんの色に囲まれています。世の中にあるものにはすべて色がついており、人が作り出した物の多くは色が与える印象や心理学に基づいて色を選んでいます。たとえば、街中に溢れる看板やサイネージの企業ロゴの色。なぜその色が使われているのか、なぜその色でなくてはならなかったのか、考えたことはあるでしょうか。人が五感で受け取る情報で一番多いのは視覚であり、その中でも形より色に影響を受けるといいます。私たちは知らず知らずのうちに、色によって心をコントロールされています
今回は、色が持つさまざまな効果や影響についてお話しします。

1. 色がもたらす感情
2. 生理的・心理的影響
3. それぞれの色が与える印象
4. コロナ禍で「売れる色」に変化
5. まとめ

1.色がもたらす感情

そもそも「色」とは、物体から反射した光が目から脳に伝わり認識されます。脳に伝わる際に脳内の組織が刺激され、 色に対して2種類の感情が生まれます。

表現感情
人は色を見た時「かわいい」や「上品」、または「華やか」「地味」などの印象を持つことがありますが、それはその人の好みによって変わりますよね。このように受け手によって異なる感情を「表現感情」といいます。

固有感情
赤やオレンジなどの暖色を見れば「あたたかい」や「明るい」イメージを持ち、青や水色などの寒色は「冷たい」や「爽やかさ」を感じませんか?このように個人の好みではなく、すべての人が同じように感じる感情のことを「固有感情」といいます。「この色といえば◯◯」といった固定概念のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。カラーマーケティングにおいてはこの感情を利用します。

 

2. 生理的・心理的影響

生理的影響
色は神経に影響を与えることが研究によりわかってきました。
たとえば「赤」は交感神経に刺激を与え、血圧を上げるといわれています。闘牛で赤いマントが使われるのは人を興奮させて盛り上げるためであって、牛を興奮させているわけではないのだそうです。また、赤には時間経過を早く感じさせる効果もあり、その効果は1.5倍といわれています。つまり20分しか経っていなくても 30分経過したように感じてしまうのです。そのためファストフード店などは回転率を上げるために赤色を配置している店が多いです。
また赤は色の中でも一番注意を引く色ともいわれています。信号機の「止まれ」が赤なのもそのためです。注意を引く=目立つということから、カラーマーケティング的に赤は「購買色」といわれます。セールのポスターやPOPの多くに赤が使われていますよね。パッケージや広告に赤を使うと20%も売上が上がったというデータもあります。そんな赤とは逆に、「青」は興奮を沈める作用があるといわれます。その効果を利用し、治安が悪い地域では、街灯の色を青みのある色にすることで犯罪件数が減少したという事例もあります。

心理的影響
「黄色」を見た時に明るい気分になったり、植物を連想させる「緑」を見ると人は安心し、リラックスしたりと、色によって感情に影響が起きます。この効果を利用し、緑はマッサージ店やリラクゼーション系の業界に多く使われたり、「安心感」や「親しみやすさ」を感じることから、建設会社のコーポレートカラーに使われていることが多いです。
またこのような心理的影響は、世界共通のものもあれば文化によって異なることもあります。たとえば「黒」は西洋文化では“死”を象徴している色ですが、東洋文化だと「白」が死を象徴する色とされています。文化は人に価値観や感覚に影響を与えます。色による心理的作用も文化や時代によって異なる場合があります。

 

3.それぞれの色が与える印象

ここでは、代表的な10色が与える印象について、紹介していきます。
それぞれの色は、ターゲット層や商品・サービスのコンセプトに応じて、バランスよく取り入れることで、マーケティング効果を最大化することができます。

赤は視覚的に最も強い色で、興奮や情熱、エネルギーを象徴します。購買意欲を高める効果があり、セールや緊急性を強調する際に使用されます。一方で、強い色ゆえに過剰に使うと攻撃的な印象を与える可能性もあります。
 

オレンジ

オレンジは陽気で親しみやすい色です。エネルギッシュで創造性を刺激する一方、赤ほどの緊急感を持たず、暖かさとフレンドリーさを感じさせます。飲食業や娯楽業界で多く用いられる色です。
 

黄色

幸福感や明るさを象徴する色で、人々の注意を引きつけます。暗い中でも認識しやすく、注意喚起の標識でも使用されています。適度な使用は好奇心を喚起し、フレッシュでポジティブな印象を与えます。
 

自然や健康、調和を象徴し、リラックス効果があります。エコやサステナビリティを強調するブランドに最適で、落ち着きとバランスの取れた印象を与えます。医療や環境保護分野でもよく使われます。
 

青は信頼性と冷静さを象徴する色です。クールで落ち着いた印象を与え、特に金融業界やテクノロジー企業で多く使用されます。安全や安定を感じさせ、顧客に安心感を提供します。
 

高貴さや神秘性を感じさせ、感覚的な価値を強調します。創造性や個性を表現し、上品で洗練されたブランドイメージを形成するために使用されます。美容やアートの分野で多く見られます。
 

ピンク

優しさや愛情を象徴し、特に女性的なイメージを与えます。柔らかく親しみやすい印象があり、若々しさやロマンチックな感情を喚起します。ファッションやコスメ業界でよく使用されます。
 

グレー

中立性や落ち着きを象徴する色で、控えめかつ洗練された印象を与えます。モダンでプロフェッショナルなイメージを作り出し、背景や補助色としてもよく使われます。
 

純粋さや清潔感、無垢さを象徴し、空間に広がりや明るさをもたらします。シンプルでミニマルなデザインに適し、医療やウェディング関連でも使用されます。
 

高級感、力強さ、洗練を表現し、力強くインパクトのある印象を与えます。シンプルながらも洗練されたイメージを作り出し、特に高価格帯の商品やサービスに多く見られます。
 

 

4. コロナ禍で「売れる色」に変化

新型コロナウイルスの影響により、世界は大きく変化しました。
それによって「売れる色」に変化が起きているようです。クッション・ピローなどを扱うとあるインテリア雑貨メーカーでは、もともとの売り上げ上位のカラーはネイビーやグレーなど、落ち着いた色が人気だったそうですが、昨今「イエロー」や「ライムグリーン」といった彩度の高い色の人気が急上昇しており、もともと売れていた定番色の2倍近く売れているのだとか。
その理由として、コロナ禍によるリモートワークがきっかけで、自分の「好きな色」、気分を高める「明るい色」を求める人が増えたのではないかといわれています。会社では周囲に馴染むように無難な色を購入する人が多かったところを、自宅用のアイテムを選ぶにあたって、自分が快適に過ごせる、「本当に好きな色」を選ぶ人が増えたのではないでしょうか。

 

5. まとめ

色は生理的にも心理的にも人に影響を与えています。色が受け取る印象は、言葉で伝えられるものよりも直感的なもののため、素直に受け入れられることが多いのです。ファッション、インテリア、広告など、私たちの身の回りのあらゆる場面でカラーマーケティングは行われています。それぞれの色の特性を知ったうえで身近にあるさまざまなものを見てみてください。必ずおもしろい発見があるはずです。色が持つ効果や影響を理解することは、デザイナーだけの専門知識ではなく、どんなビジネスシーンにおいても、優位な戦略を立てるための基礎知識といえます。