イラストとデザイン③|デザイナーとして制作するイラスト
まず大前提として、デザイナーが皆イラストが“描ける”及び“描かないといけない”わけではありません。イラストが描けなくても、イラスト制作を専門にしている方にお願いすれば全く問題ありません◎『イラストとデザイン』では、「デザイナーだけど必要に応じてイラストも描けます」という者の経験を基に、イラストレーターとデザイナーの視点から、デザインとイラストの関係性を探ります。前回の「イラストとデザイン②|イラストの流行と不朽」ではイラストレーター視点で深掘りしましたが、今回はデザイナー視点で改めて考えてみたいと思います。本記事におけるデザイナーの視点とは、具体的には「デザイナーとしてイラストを制作する者の視点」です。私はこの視点でこれまでいくつかイラストを制作させていただきました。その経験で感じたのは「デザインにおけるイラストは、主に目的に合わせてベストな表現を追求するため、必ずしもオリジナリティを求められるわけではない」ということ。それではデザインで求められるイラストは何か?これまでの実体験を織り交ぜながら、お話させていただきます。
1.デザインで求められるイラスト
2デザイナーとしてイラストを制作する
3.まとめ
1. デザインで求められるイラスト
デザインで求められるイラストは「コミュニケーションを豊かにするもの」です。一概にどのイラストが良い、悪いということはありません。世の中にあるすべてのイラストに適材適所があります。イラストを制作する者は、その“適材”を生み出すことが大切です。どんなに洗練されたイラストでも、目的から逸れた表現をしていたり、企画との連動性に欠けるものや、内容の意図が汲み取れていないなど、デザインとの相乗効果を生み出せないイラストは採用に至りにくい傾向があります。どんな企画なのか、ターゲットは誰か、世界観はどんなものか、どんなボリュームで使用されるのか、など、はじめは広い視野で捉え、だんだんと細部へと視野を縮めていくようなイメージで考えていくと答えが導きやすいです。デザインとの相乗効果を生み出しているイラストの例として、主に下記のようなものが挙げられます。
コンセプトアート
新しい製品、キャラクター、シーンなどの初期概念を視覚化するイラスト。ゲーム、映画、アニメーションの業界で多く用いられます。
エディトリアルイラスト
雑誌や新聞の記事などの内容を補完するためのイラスト。記事のテーマやメッセージを強化する役割を果たします。
広告イラスト
商品やサービスをプロモーションするためのイラスト。ターゲットオーディエンスの注意を引きつけることが主な目的です。
技術イラスト
製品の機能や操作方法、構造などを正確に視覚化するイラスト。取扱説明書や教科書に使用されることが多いです。
キャラクターデザイン
ゲーム、アニメーション、ブランディングなどで使用されるキャラクターのイラスト。キャラクターの個性や背景を表現することが重要です。
パッケージデザイン
製品のパッケージに使用されるイラスト。製品の特徴やブランドイメージを強化する役割があります。
教育的イラスト
学習教材や教科書に使用されるイラスト。情報の理解を助けることが主な目的です。
ユーザーインターフェースイラスト
アプリやウェブサイトのインターフェースに組み込まれるイラスト。アイコンやガイドイラストなどがこれに該当します。
ファッションイラスト
ファッションデザインのアイデアやコンセプトを視覚的に表現するイラスト。
2. デザイナーとしてイラストを制作する
プロのイラストレーターは基本的にオリジナルのタッチが確立されており、主にそのタッチを求めて制作を依頼されますが、デザイナーがイラストを制作する場合は少し違います。デザイナーはイラストを決めるとき、「企画(デザイン)をより魅力的にできるもの」ということを判断基準に選ぶことが多いです。それは、デザイナーがイラストの制作をする際も同じです。たとえ描き慣れているタッチとは違うものであっても、企画(デザイン)にマッチするイラストであれば、構造やクオリティを研究し、可能な限り『描ける』ようになります。イラストレーターが独自のタッチに依頼が来るのとは反対に、デザイナーはどんなタッチが表現できるのかを問われることが経験上多い印象です。そのため「こんなイラストを描いてほしい」と依頼されたときは、そのイラストにどんな特徴があるのかをしっかり分析し、どんな方法で表現できるかを検証したうえで、確立したタッチを自分の中に落とし込むことが大切です。高い完成度のイラストを目指すうえで、下記の工程を一歩一歩踏むことがなによりも大切でした。
コンセプトを考える
作業を始める前に、企画の目的やメッセージを理解することはイラスト制作においてとても重要です。効率的に制作を進めるために、不明点や不安要素がある場合は必ず確認しましょう。企画の目的やメッセージが理解できたら、それに基づいてイラストのコンセプトやアイデアを練っていきます。
参考にするイラストの分析
自分のタッチに対しての依頼でない限り、いきなり制作を始めてしまうのは少々リスキーです。まずは求められているタッチを分析し、どんなタッチの癖があるのか、どんな色使いなのか、タッチの共通点はなにか、何が魅力なのか、しっかり観察しましょう。
スケッチとラフデザイン
アイデアを具体化するために手描きやデジタルツールを使ってスケッチをし、それを基に簡単にラフを起こします。ラフは人によって認識が異なり、ちゃんと伝わらない可能性があるため、参考資料があれば一緒に添えてあげると理解の手助けになります◎
本制作
ラフをもとに、詳細を詰めてイラストを本制作します。このとき、色、形、テクスチャ、構成などは、高い完成度で仕上げましょう。
フィードバックと修正・ブラッシュアップ
クライアントやチームメンバーからのフィードバックに基づいて、イラストに必要な修正を行います。また、必要に応じて細部のブラッシュアップをしたり、視点を変えた新たなアイデアを提案するなど、修正以外の内容も検討するとよりイラストが洗練されます。
完成
提出したイラストでOKをいただいたら、必要なフォーマットでファイルを準備し、使用されるメディアに合わせて提出します。使用する場所や方法によって色の見え方やタッチが違って見えることがあるので、ツールの仕様を意識して提出すると、イラストのクオリティを統一できます◎
3. まとめ
今回は「デザイナーとして制作するイラスト」についてご紹介しました。イラストーレーターとして制作するイラストとデザイナーとして制作するイラストは視点や意識するポイントが異なります。『このデザインに似合うイラストはなんだろう?』ということを常に考えながら、これからもデザイナーとしてイラスト制作への研究を重ね、技術をより磨いていきたいと思います。
【イラストを使った制作実績】
・パッケージデザイン 4|シーシーエスコーヒー様(https://s-modern.com/works/1738/)
・リーフレットデザイン|きよめ餅総本家様(https://s-modern.com/works/4419/)
・ポスターデザイン|(株)彩電様|かりやストリートイルミネーション(https://s-modern.com/works/3915/)
・リーフレットデザイン|林ファーム様(https://s-modern.com/works/5078/)
・パンフレットデザイン2|エクスプローラー様(https://s-modern.com/works/4724/)
・パンフレットデザイン3|エクスプローラー様(https://s-modern.com/works/5061/)
・パンフレットデザイン4|エクスプローラー様(https://s-modern.com/works/5149/)
・パンフレットデザイン5|エクスプローラー様(https://s-modern.com/works/6022/)