どんな業種の人にも役立つ!“人を動かす”ライティング01
言葉は人を動かすものであり、あらゆるビジネスに欠かせないものです。言葉を扱う技術は何もコピーライターなどの専門職だけが使えるものではありません。どんな業種の方でも人を動かすための文章を書かなければならないシーンはたくさんありますよね。たとえば、以下のような悩みや願望はありませんか?
・売上がUPするECサイトをつくりたい
・ついクリックしたくなるバナーをつくりたい
・説得力のあるコーポレートサイトや会社案内をつくりたい
・相手の心を動かす企画書をつくりたい
・上司に通りやすい稟議書を作成したい
・全文読みたくなるプレスリリースのタイトルや見出しをつくりたい
・会員数UPに効果的なチラシをつくりたい
・相手が返信したくなるようなメールができるようになりたい
・制作物を外注する際、適切で具体的な指示を出したい など
わたし自身、上記のような願望と悩みがあり、プロのコピーライターのライティング講座を受講したり、ライティングのノウハウが書かれた本を読むことで、言葉のプロ以外も使える文章の設計方法を学びました。ここでは、あらゆるビジネスパーソンが活用できる、“人を動かす”ライティングのコツを全3回に分けてご紹介します。
1. 聞く力を鍛える
2.インタビューのコツ
3.「聞く」はライティング
1.「聞く力」を鍛える
“人を動かす”ライティングのコツ 第一回は「聞く力」を鍛えます。書く力をつけたいのに聞く力?と思いますよね。しかし、“書く力”をつけるためには、書くための情報収集力=聞く力 が必要です。うまく書けないのは大抵、書けるだけの情報を集めきれていないことが原因であることが多く、“どのように(HOW)”書くかの前に、“何(WHAT)を”書くか、が重要です。
事実(FACT)を見つける
情報というのは、書く人によって変わらない不変なこと=事実(FACT)です。ライティングがうまい人、端的にわかりやすく伝えることができる人は例外なくこの“事実(FACT)”を見つけることがうまいといいます。魅力的なFACTさえ発見することができれば、表現を凝らずとも、スッと伝わる文章が書けます。イキの良い材料が獲れたらそのまま食べた方がおいしい、また素材そのものの味が立っていれば、料理のテクニックが未熟でも十分おいしいものになりますよね。ライティングにおいてもそれは同じで、良い素材があればそのまま書く。下手に格好つけたり、おしゃれな言い回しにしようと試行錯誤してみたり…無理に表現を凝ろうとせず、普通の言葉で、日常会話の言い方で十分伝わる文章が書けます。
では、その魅力的なFACTはどんな人から吸い取れるのでしょうか。それは、商品やサービスの開発者やヘビーユーザー、ファン、などが適任です。この人たちは無自覚に魅力的なFACTを持っています。彼らから話を聞くことで、「書く」ための素材を集め、その中で魅力的なFACTを「発見」します。書く=発見です。だから「書く」ためには「聞く」を鍛えることが重要なのです。
2. インタビューのコツ
とはいえ、インタビュアーではない人がいきなり取材をしてみても、肝心なことを聞きそびれたり、世間話ばかりになってあまりツッコんだ話ができなかった…ということになりかねません。プロのコピーライターから聞いた、どんな仕事でも応用の利くインタビューのポイントをご紹介します。
STEP1:下準備のポイント
インタビューは相手の貴重な時間をいただいて話を伺うので、「時間がもったいなかった」「無駄だった」と思われないよう必ず取材日までに下準備をしておきましょう。
①目的を明確にする
そもそも何のために話を聞きに行くのか、を明確にしましょう。
たとえば…
・採用サイトで取り上げる社員に印象的な仕事やこれまでのあゆみを聞く
・新商品の開発チームの責任者から開発秘話を聞く
・ユーザーへの調査(お客様の声) など
ここで定めた目的は、取材当日も目につくところに書いておきましょう。話が脱線しても軌道修正できるようにするためです。
②相手の業界を下調べする
取材相手の業界のことをある程度学んでおきましょう。調べればすぐわかるようなことを尋ねてしまうと「こんなことも知らないのか」と相手はシラけてしまいます。ただし、調べすぎにも注意が必要です。調べた内容を自分から語りたくなってしまって自分ばかり喋ってしまったり、わかった気になってヒアリングがおろそかになることがあります。あくまでも相手から話しを聞き出すため、受け答えのための下調べです。目的を見失わないように注意しましょう。
③事前に目的と内容を相手に共有する
取材を依頼する際、事前にこの取材の目的と設問の内容を共有しておきましょう。相手がこれまでに何度も取材を受けているような取材慣れしている人とは限らないので「このような内容を聞きますよ」と心の準備をしておいてもらいましょう。事前に設問の書いたアンケートを用意してみても良いです。ただし、当日の取材をアンケートの確認の時間にしないよう注意してください。アンケートは取材のための「手がかり」にすぎません。
④定番の取材の流れをイメトレしておく
たとえばECサイトのユーザーへの調査の場合、「どこでこのサイトを知って(見つけて)」「なぜ選んで」「どこと比較して」「購入してみた感想・満足感は」…など、聞くべき設問の“定番”があるものです。その流れをだいたいでも良いので覚えておいて、取材の流れやストーリーを想像しておくと当日慌てないで済むので緊張しやすい人はやっておきましょう。しかし、流れをガチガチに想像しすぎていると想定外のことを言われた時に余計に慌てることになるのでほどほどに。やりすぎはアドリブに弱くなるので注意しましょう。
STEP2:当日のポイント
さて、いよいよ取材当日。これから向かう会社、人はどのような環境で過ごし、どのような文化を持っている人かを考えて服装やヘア、メイクに気をつけましょう。取材は話を聞きに行くのが目的です。わざわざ第一印象で損をしないように。取材当日の朝は服を選ぶところから取材は始まっています。取材相手は服装のコードの厳しい社風の企業?社員同士あだ名で呼び合うようなフランクな社風?相手に合わせた服装・キャラクターで挑みましょう。
①レコーダー・スマホで録音が安全
都度メモを取っていたのでは、相手の話の腰を折ってしまいます。相手がせっかく気持ちよく喋っているのに、メモをいちいち取っていては気が散って話に集中できません。相手の目を見てきちんと相槌を打つために、録音機材は用意しておきましょう。あとから聞き直すのは時間がかかりますが、聞き直すことで自分の取材の進行を振り返ることができ、反省点を次の取材に活かすことができます。取材当日は、緊張していたり、相手の話に全集中力を注ぐので、自分が何を言っていたかはほとんど覚えていなかったりすることも多いので、録音しておくと安心です。
②話題泥棒にならない
お話し好きの人に多いのですが、知っている話題や興味のある話などは、思わず食いついてしまい、相手の話を聞くはずが自分ばかり喋っていた…ということがよくあります。取材では話したい気持ちをぐっとこらえて合いの手程度にとどめ、すぐに相手にバトンを返しましょう。わかる話だからと自分ばかり興奮して喋っていると、相手はしらけてしまいます。あくまでも相手を話しやすくするためのサポート役、ということを忘れないように。
③自分の言葉に置き換える
「それってつまり、こういう解釈でよろしいでしょうか?」と、要所要所で自分の言葉に置き換えて相手に質問してみてください。取材の目的は書くためのFACT(事実)を見つけること。自分の言葉に置き換えることで理解が深まり、かつ書く時の表現力も高まります。間違っていればその場で補足をお願いし、それを繰り返すことで更に話しを深堀りできます。
④エモーショナルとロジカルのバランス
たとえば商品開発のエピソードを話してもらったとき、ただ時系列で出来事を追っているだけでは心に残りにくいもの。「その時、どんな気持ちでしたか?」や「それによってどのくらい好転したんですか?(数字が聞けるとより具体的で◎)」など、設問はエモーショナル(感情)とロジカル(事実)のバランスが大切です。この2つのバランスを意識して話を聞き、それをもとにして文章を構成すると、読み手が感情移入しやすかったり、内容が理解しやすくなります。
⑤それって誰得なんですか?
相手が気持ちよく喋っている時に「それ、誰が得するんですか?」なんて失礼な聞き方をしてはいけませんが、話が盛り上がっている時こそ一歩引いて、フラットな目線で見ることが大切です。作り手の自己満足になっていないか?その商品やサービスは、誰が何のために、買った人にどのような恩恵があるものか、を深堀りしましょう。
3. 「聞く」はライティング
質問の内容も、相槌の言葉も、メモも、すべて自分が生み出した文章、コピーです。適切なアウトプットがないとインプットにつながりません。「聞く」を鍛えることは「書く」を鍛えること。上記の取材のコツを参考に、まずは「聞く力」を磨きましょう。
また、取材は相手が居ないと成り立ちません。毎回「相手の貴重な時間をもらって話を聞かせていただいている」という意識を持って取材に挑みましょう。忙しいから、数をこなしていて慣れているから、と聞き方が不誠実だったり、そのあとのライティングがいい加減だったりすると相手を傷つけてしまいます。「聞かれて話すのは気分の良いこと」と思ってもらえるよう、気持ちよく話してもらうための工夫が大切です。
次回は“人を動かす”ライティングSTEP2「絞り込む力」をレクチャーします。