デザインを依頼するときのコツとデザインの設計図の作り方
競合やターゲットの分析、目標設定、販促施策の決定を経て、いざデザイン制作へ。
しかしこの段階で、
「思っていたデザインと全然違う…」
「修正が多くなって時間もコストもかかってしまった」
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
販促施策の成果は、戦略だけでなくデザインの仕上がりによっても大きく左右されます。
そこで本記事では、
・デザイナーや制作会社にどのように依頼すればよいか
・イメージのズレを防ぐための具体的な伝え方
この2点を軸に解説します。
デザイン依頼時に押さえておきたい4つのポイント
1.企画について詳しく伝える
デザイン発注へ至るまでの自社や他社の分析、ターゲット分析、施策の目的・意図がまとまった企画書などがあれば、できるだけデザイナーにも共有しましょう。
特にカスタマージャーニーマップには、「どのタイミングで」「どんな感情の人に」「何を届けたいか」という、デザインに落とし込むためのヒントが多く含まれています。世の中にはたくさんの販促物が溢れているので、ターゲットの日常的な行動や感情も伝えておくと、「目に留まるデザイン」「埋もれない表現」を考えるうえで大きな助けになります。
加えて重要なのがスケジュールの共有です。
ある程度デザイナーとやり取りしてお互いにスピード感を把握しているのであれば問題ないですが、制作する内容やデザイナーの抱えている仕事量によって完成までの期間が変わってくるため、はじめはスケジュールに余裕を持って依頼する事をおすすめします。
2.どのようなシチュエーションで使用されるかを伝える
同じデザインでも、使われる場所や状況によって最適解は変わります。
たとえばイベント告知ポスターの場合。告知ポスターなので、タイトルや日付はもちろん大きく載せたい。会場の住所やマップ、出展内容、WEBサイトにつながるQRコードもあると便利。
しかし…
・人通りが多く、立ち止まれない場所なのか
・遠くから見る前提なのか
・近距離でじっくり読まれるのか
によって、「情報量」「文字サイズ」「QRコードの扱い」などは大きく変わります。
オンライン施策も同様です。情報量の多いWebサイト内に設置されるバナーであれば、周囲の環境を踏まえたデザイン設計が必要になります。
掲載場所・閲覧距離・閲覧時間など、想定できるシチュエーションはできるだけ具体的に伝えましょう。
3.抽象的な言葉ではなく具体的な言葉で伝える
「かっこいい感じでお願いします」
この一言だけでは、人によって解釈が大きく異なります。
たとえば同じ「かっこいい」でも、
・スポーティーさを感じる青基調のデザイン
・ゴシック体を使ったビジネスライクな印象
・ハイブランドのグラフィックのような世界観
など、表現は数多くあります。
色・書体・雰囲気・参考ジャンルなどに分解して伝えることで、
デザイナーとの認識のズレを減らすことができます。
4.参考イメージを共有する
言葉で伝えきれない部分は、視覚情報で補いましょう。
参考イメージを共有する際は、なぜそのデザインが良いと思ったのか、どの部分を参考にしてほしいのかを一緒に伝えるのがポイントです。
(あくまで参考なので、似すぎてしまったりそのままのデザインで制作してしまわないように注意が必要です)
参考サイト
デザイナーでない人も知っている写真共有サービス。世界中の画像が検索でき、類似画像を探し出すのも簡単なので大変便利なSNSです。
Adobeが運営している、クリエイター向けの作品公開SNSです。クオリティの高いグラフィックを探し出す事ができ、使用されたツールや制作された経緯なども掲載されているため、閲覧するだけでとても勉強になります。
高品質な縦長デザインのサイトを数多く掲載されています。カテゴライズがとても丁寧なので、目的のデザインにたどり着きやすく、見やすいギャラリーです。
また、ターゲット層が好みそうな雑誌を実際に読んでみるのもおすすめです。
誌面をスクラップして「この写真の雰囲気が良い」「この見出しのあしらいが好き」と共有するだけでも、イメージは格段に伝わりやすくなります。
イメージのズレを防ぐ「デザインの設計図」
それでもなお、「完成したデザインが想像と違う」という事態を避けたい場合に有効なのが、サムネイルやラフを用意することです。
サムネイルやラフは、「上手く描く」「綺麗に作る」必要はありません。大切なのは、何を伝えたいかが明確にわかることです。
サムネイル…サムネイル(thumbnail)は、親指の爪ほど非常に小さいものという意味。ラフより前の段階で、より小さく大まかにスケッチしたものを言います。
アイデア出しでサムネイルをいくつかざっと書き出していき、その中から良いと思ったものを選んでラフに起こしていくこともあります。また、依頼者側がサムネイルを書き、それを元にデザイナーがラフを起こすパターンもあります。サムネイルを起こさずにラフだけ書く事も多いです。
ラフ…ラフ(rough)は乱雑、大まか、細部に工夫を凝らさずシンプルで大雑把という意味で使われますが、デザインの用語で用いられる場合も、精密でなく大まかにざっくりと図化したものを言います。
打ち合わせの段階でデザイナーがささっとラフスケッチを起こす事もありますし、具体的な考えを伝えるために依頼者側が書くこともあります。

上は筆者が過去に冊子ものを制作した際に書いたサムネイル(上)とラフ(下)です。紙面全体の流れを把握するためや、一冊を通してのメリハリを確認するために、全ページのサムネイルをおおまかに書き出しています。
そこから、情報が多く細かいページに関してはさらに内容を整理してラフを書き、担当者に共有しています。丁寧ではありませんが、内容が伝われば本当にこんな感じで大丈夫です。このようにして図化すれば、早い段階で方向性のすり合わせができ、やり直しなどのリスクも低減できます。
設計図を書いていく流れ(一例)
❶情報整理
まず、手元にある情報を整理整頓し、どのようなシチュエーションで使用される媒体であるか、一番訴求したい事は何か、他に足りない情報は無いかなどを確認していきましょう。5W1Hなどのフレームワークにあてはめて、漏れがないかチェックするのも手です。
次に、それをもとにグラフィック上に必要な要素を洗い出していきます。
企業や製品のロゴ・キャッチコピー・文章・写真・イラストなど…デザイナーにどんな素材を提供すればいいかもここで把握しておけます。

❷かなりざっくり描く
下書きの下書きとしてサムネイルを書きます。自分だけが理解できるレベルで問題ないので、かなり大まかなスケッチで書き出していきます。パターンが出せるのであればいくつか書いてみるのもいいでしょう。
❸ ❷で書いたものを清書する
サムネイルの中から選んだスケッチを、もう少し詳しく清書していきます。第三者がが見たときに、説明がなくてもどんな情報が載っているかを判別できるレベルで書きます。絵が苦手な方は文字で補足しても構いません。
❶で整理した、「シチュエーション・媒体に則ったレイアウトになっているか(視線の流れや可読性の確保など問題ないか)」「一番訴求したい内容が訴求できるようになっているか」といった視点も忘れずに。
自分で判断できない場合は、基礎の部分だけ大まかに書いてデザイナーに委ねても大丈夫です。デザイナーもラフを見て、さらに最適で、より良いアイデアを盛り込んだデザインを提出してくれるはずです。逆に、「○○○○という狙いがあるので、ここの部分は指示通りに作って欲しい」という要望がある場合は、デザイナーに伝えるようにするといいでしょう。
まとめ
デザイナーに具体的にイメージを伝えることは、
・修正のやり取りを減らす
・スケジュールの遅延を防ぐ
・追加コストのリスクを下げる
といった、多くのメリットがあります。
すべてをデザイナーに任せるのも一つの方法ですが、最短ルートで、納得感のあるデザインにたどり着くためには、伝えやすい形で意思疎通を図ることが重要です。
難しく考えすぎず、言葉・参考イメージ・簡単なラフを使って、あなたのイメージを書き出してみてください。
それが、戦略的なデザイン制作への第一歩になります。
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