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商品の強みが広告の弱みに!? マーケットイン思考で売れる広告に

広告で伝えたいことをまとめるとき、どのような考え方でまとめていますか? 自社製品・自社サービスの強みだけに気を囚われていませんか? 強みはもちろん伝えるべき強みなのですが、ユーザー目線での広告作りを意識しないと伝わらない広告になり、本末転倒です。ユーザーの心に届く広告を作れるようになるために、本記事では「マーケットイン」の思考を取り入れた広告作りのポイントをお伝えします。

1.プロダクトアウト/マーケットインとは
2.どうしてプロダクトアウトな考え方になってしまうのか
3.広告の基本構成
4.購入の決め手は言葉!原稿作成のポイント

1.プロダクトアウト/マーケットインとは

マーケティング界では浸透しているこの2つの言葉。どちらも商品開発・サービス開発にかかわる言葉です。スズキモダンが拠点を置く愛知県はモノづくりが活発な地域で有名ですが、自分たちが考えるものを自分たちの技術で開発できるが故に、市場調査が不行き届きのために売れない、という結果に陥ってしまう場面を目にしたことがあります。
広告も同様です。自分たちが考えるものを自分たちの表現で作ってしまうとユーザーの心に響きません。ユーザーが「欲しい」と思う表現でないと興味さえ持ってもらえないのです。ここでプロダクトアウト/マーケットイン双方のメリット・デメリットを理解し、広告に活かしてはいかがでしょう。

●プロダクトアウトとは
簡単にいうと「自分たちが考えたものを自分たちの技術を出して(OUT)開発すること」です。ブランド志向が強かった高度経済成長期に主流だったビジネスの方法で、企業の方針やアイデア、技術を起点として開発し、その後売り方を考えるやり方です。

[プロダクトアウトのメリット]
・企業のアイデアや技術の高さが発揮できる。
・目新しいものが開発できる。

[プロダクトアウトのデメリット]
・ユーザーのニーズに沿っていない可能性があるため、品質が高くても売れないかもしれない。
・開発や販売にかかるコストが回収できない可能性もある。

●マーケットインとは
簡単にいうと「市場調査で分かったユーザーニーズから入り(IN)開発すること」です。高度経済成長期を機にモノが溢れ、企業は与える立場からユーザーに選ばれる立場に変遷していきました。ユーザーに選ばれるために、ユーザーの行動や心理をよく知り、それを基に開発する方法です。

[マーケットインのメリット]
・ユーザーのニーズを汲み取って開発するため、売れやすいものを流通させることができる。
・パッケージや広告においてもユーザー好みの見せ方ができるため、選ばれやすい。

[マーケットインのデメリット]
・顕在ニーズに基づく開発だと、新しさがないため競合が多い。
(ダイソーのアイデア商品のように潜在ニーズを満たすものであればヒットすることもありますね!)

マーケットインが新しい考え方にはなりますが、どちらが良い悪いではなく、自社の技術と市場で求められるものを理解した上で開発に取り組むのがよいでしょう。自動車メーカーが展示会でお披露目するコンセプトカーは、メーカーが持てる技術を搭載したプロダクトアウトで、今すぐ売れるものには思えません。しかし、未来のマーケットで求められることが戦略されています(自動運転機能がそうですね)。両側面から考えていくことが強い商品を生むのです。

2.どうしてプロダクトアウトな考え方になってしまうのか

それは自社目線のみでのジャッジになってしまうからです。一から開発すると、自分たちのアイデアや苦労に思入れが強くなったり、競合との違いを素晴らしいと思ってしまうものです。開発したものが新しいと感じるのは自分たちだけ、賜物と感じるのは自分たちだけ、ニーズがあると感じるのは自分たちだけ、という現実に気がつけず、実際のユーザーからすると思うほど魅力的に映るとは限らないのです。高品質な高級品ばかり売っていても、そこまでの質を求める人が少数なら売れ行きは芳しくないでしょう。過信しないためにはユーザーの行動や心理をよく知り、自分たちの技術で何ができるを考えること。逆も然りで、自分たちの技術がユーザーのニーズをどれほど貢献できるのかを考えることが不可欠です。つまり、バランスよく取り入れることが大切。人々が求めているものを技術の高さで実現できれば、ユーザーのニーズが十分に満たせるでしょう。

3.広告の基本構成

広告は商品やサービスに対しお金を払って利用してほしい人に向けて発信するものです。かつ、瞬時に興味を持ってもらうことが勝負の明暗を分けます。「広告=デザイン」と思っている人もいるかもしれませんが、デザインよりも先に広告に載る「内容」が大切です。どんなにデザインがいい広告でも内容が整理されていなければ広告の力を十分に発揮できません。広告で伝えたいことがたくさんあると思いますが、伝えたいことに優先順位をつけることが大切です。広告に慣れない人は以下の3段階で構成するとよいでしょう。

広告の基本構成
①何を売っているか
②どんなものか・どう使うか
③どう行動してほしいか

4.購入の決め手は言葉!原稿作成のポイント

広告デザインで先にデザインを考えてしまうとプロダクトアウト的な広告になってしまいます。そうならないために「何を伝えたいか」を先に考えます。
上記で「伝えたいことに優先順位をつけること」と書きましたが、その優先順位をつけるプロセスを解説します。

(1)伝えたいことやキーワードをたくさん書き出す
白紙にたくさん書き出しましょう。この段階ではマーケットインはひとまず置いておいて、自社や商品の強みも書いてOKです。

例:スマートフォンの新作発表の広告
・開発10年
・今までの技術を多く搭載している
・バッテリー最大10時間連続稼働
・12メガピクセルの高画質カメラ
・本体5色展開
・180gの軽量化に成功

 

(2)特に伝えたい言葉を抽出する
たくさん書き出した言葉の中から、特に伝えたいことを選びます。

例:スマートフォンの新作発表の広告
・開発10年
◎今までの培った技術を多く搭載している
・本体5色展開
◎バッテリー最大10時間連続稼働
・180gの軽量化に成功
◎12メガピクセルの高画質カメラ

 

(3)プロダクトアウトな言葉をマーケットインに変換する
ここが大事なポイントです。自社や商品の特徴・強みが、購入したユーザーにはどのようなメリットがあるか、どんな気持ちになるのか、という言葉に変換します。ユーザーは商品のスペックの高さを語られるより、自分への得が端的に分かるほうが興味を持つものです。たくさんの人に向けた言葉選びではかえって誰にも響かないので、ターゲットが反応する言葉を抽出します。ターゲット設定はSTP分析(https://s-modern.com/column/4951/)で定めるのも方法のひとつです。

例:スマートフォンの新作発表の広告のキャッチコピー
“開発10年!最大10時間連続稼働のバッテリーに12メガピクセルの高画質カメラ搭載。今まで培ってきた技術を発揮したスマートフォンが登場!”

マーケットイン思考に変換

“その風景をそのままに撮影。充電することを忘れてしまうバッテリー。頼れる一台をあなたの手に。”

 

このように変換するとマーケットの需要を満たせる表現に変えられます。作り手だと商品知識に詳しいが故に端的に表すのが難しかったり、苦労をアピールしたくなるかもしれませんがそこは思い切って取捨選択しましょう!プロダクトアウトな言葉で買いたくなる人はいないと思ったほうが変換しやすくなりますよ。広告で伝えたいことが分からなくなってしまう人は、以上のことをインプットしてはいかがでしょうか。独りよがりの広告になってしまわないよう、マーケットインの思考で自社の強みを客観的に表現することが大切です。自信をもって作った自社製品、買ってほしい人に選んでもらえる表現でアプローチしていきましょう。

 

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