投稿日:|更新日:

マーケティングと行動心理学 その15―松竹梅の法則―

住まい探しのために不動産屋めぐりをしたことがある方は少なくないと思いますが、その際、いくつかの物件を見て回り、一番高価な物件ではなく、一番安価な物件でもなく、その間をとった物件をなんとなく選んでしまったという経験はありませんか?これは「松竹梅の法則」という心理効果が働いているからです。セールスに使えるテクニックで、客単価や利益率を上げ、成約率そのものを上げる効果があるとも言われています。今回は「松竹梅の法則」をご紹介します。

1. 松竹梅の法則とは?
2. 選択肢が2つや4つ以上ではダメな理由。
3. ツァイガルニク効果のデメリット。
4. 今回のまとめ

松竹梅の法則とは?

「松竹梅の法則」とは、三段階の選択肢があった場合、多くの人は真ん中の選択肢を選んでしまうという心理傾向のことを言います。欧米では「ゴルディロックス効果」とも呼ばれています。ゴルディロックスという名前の女の子が主人公の英国童話『ゴルディロックスと3匹のくま』が語源となっており、熊の親子の家に迷い込んでしまった少女が、熱すぎない冷たすぎもしない「ちょうどいい」スープや、「ちょうどいい」柔らかさのベッドを見つけていくことから、欧米では「ちょうどいい」「心地いい」選択を誘導する営業の交渉術として「ゴルディロックス効果」という言葉が使われています。「松竹梅の法則」も同様に両極端な選択は避け「ちょうどいい」を選択する「極端の回避性」という心理効果が働くことにより、ついつい真ん中を選んでしまうのです。もう少しわかりやすく説明すると、例えばお寿司屋さんで食事をする場合、松=9,000円・竹=5,000円・梅=3,500円の中から1つを選ぶ場面に遭遇したとき、一番高いモノに対しては「安いモノよりは品質が良いはずだが、自分には贅沢だとも思える。それにもし選んで失敗だったときのがっかり感は大きい…」という心理を抱きます。一方、一番安いモノに対しては「これを選んで、自分はケチだと思われないか」といった見栄の心理が働きます。よって、「失敗だったときの損失が少ない」かつ「世間体を保つことができる」真ん中が選ばれやすくなるというカラクリです。その比率は「松=2:竹=5:梅=3」だとも言われています。

選択肢が2つや4つ以上ではダメな理由。

先に言っておくと、選択肢が2つでも4つ以上でも不正解であるというわけでは決して有りません。目的を仮に「商品の利益率を上げる」と設定したときに機能するかどうかの判断基準になります。それを踏まえた上で選択肢が2つの場合はどうでしょう。先程のお寿司屋さんの例であげた3,500円と5,000円の2つの選択肢しかなかった場合です。この場合7割の人が3,500円の商品を選びます。2つの選択肢だと5,000円が最も高額商品となるため、極端の回避で敬遠されてしまいます。更に選択肢が2つの場合は単純に2つの価格を比較し、安い方がお得と感じられてしまうためです。5,000円の商品を売りたいならばこの方法はミスマッチと言えます。では選択肢が4つ以上あった場合はどうでしょう?それは「買わない」という選択をさせてしまう可能性が高くなる。ということです。なぜなら人は選択することに頭を使うことを本能的に嫌がる生き物だからです。これを「選択回避の法則」といいます。よって多すぎる選択肢はかえって売上を落とす結果になってしまうこともあるということです。このように「松竹梅の法則」は、「買うか買わないか?」の選択を3択にすることで「どれを選ぼうか?」に論点を切り替えてしまうとっても効果的なテクニックと言えます。
ただし飲食店のように入店=何らかの商品を購入することが前提の場合はその限りでは有りません。しかし人が一度に記憶できる短期記憶は3〜5個だと言われています。つまり商品の比較検討も瞬間的な処理では3〜5つが限界だということです。ファストフードのドリンクサイズもS・M・Lと3段階でわかりやすいですよね?余談ですが、人気のシアトル系コーヒーショップに初めて訪れた際、トール?グランデ?と戸惑いませんでしたか?

マーケティング活用3つのポイント

① 売りたい商品を「竹」に設定する

真ん中の選択肢がもっとも売れることから、当然一番売りたい商品を「竹」に設定することが必要になります。また、一番売りたい商品であると同時に一番売りたい価格帯であるということも重要なポイント。つまり「竹」商品の利益率を最も高くしておくことで、全体の底上げに繋がります。

② 「竹」商品を選ばせる技アリな価格設定

先程のお寿司屋さんの例を参考に説明します。

松=9,000円 →「竹の+4,000円。さすがの高級感…」
竹=5,000円(売りたい商品)
梅=3,500円 →「後1,500円で品質が上がる…」

このように並べると、「梅」商品と「竹」商品を比較したときに、「最低価格のものに少しだけ足せば、良い品質のものが手に入る」と感じさせる価格設定にすることが大事です。また、最高価格の「松」商品には逆に割高感を出すことで高級であることに価値を見出す人にとっての満足を引き出すポイントになります。

③ 提示する順番にもテクニック

松竹梅の法則と言いますが、伝える順番は「松・梅・竹」のほうが効果的です。まず「松」商品を提示することで商品への関心や購買意欲を引き寄せます。そこで懸念されるのは価格です。よって次に最低価格の「梅」商品を提示します。すると顧客は「そこまで質を落としたくない」という心理になり、最後に提示する「竹」商品をちょうどよく感じさせやすいというものです。

今回のまとめ

「松竹梅の法則」顧客に3つの選択肢を与えることで「買ってほしい商品」を効果的に選択させるために役立つ法則です。私たちが消費者として無意識のうちにとっている選択や行動の中には、このように法則性を持つものがいくつも存在しています。商品やサービスを提供する場合には、こうした法則を読み解きマーケティングに活かしていくことで、売り上げの向上が期待できます。興味がある方はバックナンバーもぜひ御覧ください。

> 関連記事
NEXT
「マーケティングと行動心理学 その16―プライミング効果―」
BACK
「マーケティングと行動心理学 その14―ツァイガルニク効果―」