Project story
信頼には信頼で返したい
Client
chaconnee(シャコンヌ)
Product
ロゴデザイン・DM制作・スチール撮影
インタビュー
主に女性向けの洋服を扱うセレクトショップ「シャコンヌ」。オーナー榎並さんとはお店をオープンするタイミングでロゴ制作をご依頼いただき、以来10年近いお付き合いになります。今回は改めてお店を始めた経緯や今後の展望についてお話しを伺いました。
鈴木:では、今日はよろしくお願いします。
榎並さん:よろしくお願いします。
鈴木:唐突ですが、榎並さんは個人事業主ですよね。毎回の販促物の制作予算について、いわゆる大企業の「広告費」という枠組みではない気がしています。榎並さん個人の大切なお金を預かって集客をするということに対して、僕は結構プレッシャーがあります。上場しているような企業の宣伝部となると、販促に使われるお金は莫大な広告費の一部ですので、比較的ビジネスとしての意味合いが強いです。一方で榎並さんとのやり取りは、個人のお財布からダイレクトにお金を頂いているという感覚があります。普段は言わないですし変な意味ではないのですが、プレッシャーの度合いが少し違います。なので、榎並さんとの1対1でのお仕事は、榎並さん個人のお力になんとしてでもなりたいと思ってやっています。
榎並さん:はい、いつもよく伝わっています。
鈴木:ありがとうございます。僕が弊社のスタッフに対してそのような想いを伝えつつ、「大きな企業とも榎並さんと対峙する時と同じ気持ちで向き合おう」と普段から言っている背景もあって、改めて今回のインタビューをお願いしました。
榎並さん:光栄です、ありがとうございます。
理想の環境は自分で作るしかない
鈴木:まずは、僕が伺ってみたかったのは、榎並さんの独立当時のお話です。独立してシャコンヌを始められる前にジョンスメドレーで働いてらっしゃったとお聞きしています。自己紹介的に、当時の様子を改めてお願いできますか?
榎並さん:私はアパレル歴が長いわけではなくて、娘が小学校2年生までは完全な専業主婦でした。その間は音楽の方に少し携わっていまして、音大卒だったので自宅でピアノを教えていました。お洋服はずっと好きで、どこかのタイミングで最終的にアパレル業界に行きたいなというのはありました。その影響として私の父がアパレルの会社をしていたことは、大きかったように思います。まず娘が2年生になったときに転勤で広島にいきました。そこで、自分の好きだったブランドにいきなり飛び込んで、経験もないけれども、そこで何か一緒にお手伝いをさせてもらえることはできないか?と言ったのが今も恩人だと思っている社長が扉を開けてくれました。未経験の私に、「うちでよかったらおいでよ」と言ってくださったのがきっかけでした。そこから主人の仕事が名古屋に変わることになり地元である名古屋に戻るという形になりましたが、当時の社長が「名古屋でもアパレル続けるつもりがあるならジョンスメドレーに声を掛けてあげるから」と紹介していただき、ミッドランドにあるスメドレーにお世話になったというのがきっかけです。
鈴木:服飾の仕事に就いたのは、お父さまからの影響もあると思いますが、お父さまはブランドをやられていたということですか?
榎並さん:父は岐阜の繊維街にお店がありました。岐阜の産業というのは本当にオリジナルです。婦人服の卸業をしていたから、今やっていることと全部が一緒ではないのですが、私の母もすごく服が好きなおしゃれなひとです。服に携わるということに少なからず影響はあったのだと思います。
鈴木:いいですね。ファッションが生活の身近なところにあったのですね。ジョンスメドレーと、広島のセレクトショップと働き方の違いなどはありましたか?
榎並さん:やはり個人でやっていた社長のセレクトのこじんまりしたところと、いわゆる大きな企業というアパレルの違いはありました。ずっと専業主婦だったこともあったから、多くのことを知らなさ過ぎて苦労はしました。
鈴木:そうですか。
榎並さん:規則に則った接客の決まりごとがあるという点がまず大変でした。偉そうなことを言いますけれども、その時のスメドレーの基盤があったからこそ今があります。仕入れ、納品、経理のことなど本当に大事な勉強だったという思いがあります。
鈴木:榎並さんの接客はとても心地よいのですが、広島時代も多くの服を売られていたのですか?
榎並さん:どうでしょう。最初からそういう位置にいたわけではなくて、広島の社長の奥さん、マネージャーが私の力を引っ張ってくれました。そういうところがあるというのをその方が引き出してくれたみたいな感じです。言ってしまうと、お手伝いができればいい感覚で正社員ではなくてパートでさせてもらっていたから、最初はみんなのサポートができればいい、好きな服に囲まれたら幸せというぐらいの気持ちでした。人との関わり方をマネージャーがすごく「あなたは、こういうことが得意だと思うわよ」みたいな引き出し方をしてくださった方で。
鈴木:素敵ですね。導いていただいたという感じですね。榎並さんがやはり、人当たりというかそういう才能があったのでしょうね。
榎並さん:割と受け身になりやすく、お客様の話を聞くのがすごく好きでした。
鈴木:聞き上手ですか?
榎並さん:それが大事なことなのかなというのは、その頃から意識するようになりました。
鈴木:販売業は「売る」という側面にフォーカスしがちですが、榎並さんが大切にされている接客は「聞く」という点がポイントなのでしょうか。
榎並さん:そうですね。やはりスメドレーで学んだことは、仕事として接客をしているので、勤め先が個人店であろうが企業であろうが売らなければいけません。だから、売ることはもちろん重要なことです。でも、納得して買ってもらえることを大切に考えていました。そして、どこでも買えるかもしれないものをこのお店で買いたくなる理由が重要です。
あとは情報のアンテナ。私自身が思うのは、やはりアンテナが立っていない販売員さんから接客してもらっても面白くないと思います。服のことばかりではなくて、お話ししている間に衣食住、全部の話が広がっていっていろいろな情報をそこで得られて、お洋服も買って帰るというのが自分も楽しいと思うから、その辺りはスメドレー勤務の頃は私も自分の勉強と称して、自分の買い物もすごくしましたし、アンテナは常に立てておかなければならないという意識を持っていました。
鈴木:面白いですね。僕の話になってしまいますが、僕も学生時代に鞄屋でバイトをしていたのですが、それまで僕は接客をしたことなかったので、売り方としてはやはり商品説明して機能で売るということに終始していた気がします。ただ、榎並さんのお話を聞いていると、やはりそれだけではなくて、納得して買ってもらうために他のお話しで少し距離感を詰めていったり、商品以外でも楽しんでもらっている。榎並さんから買うことで他のお店で買うより「嬉しいこと」が多くあるように思います。やはり接客のプロという方たちはそういうところを意識されてやられるのだなと思いました。
榎並さん:商品の情報をきちんと伝えられることが一番だと思うのですけれども、それプラスがないと、またここでもう1回というのが生まれにくいのかなというのは考えるようになりました。
鈴木:すごく面白いです。では、少し話を進めます。榎並さんは2015年9月29日にシャコンヌをオープンされました。何か思い立ったのでしょうか。
榎並さん:正直自分のお店を持つということは考えていませんでした。怖いし、不安だし、私にはできないと思っていました。「どうしてもやりたい」という気持ちはなかったです。ただ、スメドレーに5年間いたのですが、だんだんそのポジションが上に上がっていかなければいけなくなります。サブ店長、店長というふうにもっと上がって試験を受けてというのが勤務の年数でもう決まった道です。そうすると、接客から離れる業務が増えてきます。奥のストックでパソコン業務をして数字に追われるという流れに乗ってきて、本当に服が好きでアパレル業界の扉を叩いた当時とやりたいことが少し違ってきたなと感じました。生活は安定はしているけど、好きなお洋服を楽しくお客様に紹介するというところから外れたと思いました。では、どうしたらいいのか?どこのお店で務めても企業であれば同じ様になっていくわけだから、自分の空間を作るしかない、自分が好きでやりたいことは自分の空間を持たなければ実現できないと思いました。それがスメドレーの4年目ぐらいの時期だったと思います。
鈴木:理想の環境は自分で作るしかないと。
榎並さん:はい。1から始めるなら、50歳より前にやりたいなと思っていて、そうやって思い描き始めていろいろな人に話していったら、どんどん歯車がうまく噛み合いっていい方向に導いてもらえました。1年程経ったときに今の店舗が見つかりました。「夢を実現するには言葉にすると、そのように動くよ」ということは皆さんも言いますよね。そして、何より主人の力が大きいです。本当に何の反対もせずに、「やるべきだよ。そんなに好きなのだから、できるよ。あなたなら、きっとできる」とすごく背中を押してくれました。お金も動くことですし、主人の反対があったら切り出せなかったです。
鈴木:身内の方の応援は大きいですよね。
榎並さん:とても大きかったです。すごく力を貸してくれました。
鈴木:シャコンヌのお客さんはどのような方が多いですか?
榎並さん:1枚、1枚をすごく丁寧に買ってくださるので凄く有り難いです。私は「本当にいいもの」と思える服をお店に並べています。お客様に本当にいいものだからと言って買ってもらえることのうれしさがあります。組織の中にいたら、やはり売上が一番大事なことですが、このお店では成績やノルマではない部分を大切にお迎えしています。
鈴木:ここはご自身がやりたいことが実現できる理想の空間なのですね。
榎並さん:そうですね。8年目になるのですが、今また気持ちが変化しているのを感じています。私ではなくてまずお店のシャコンヌがその空間としてできあがっています。私はそこに自分が中心ではなくて、お手伝いというような気持ちに変わっています。上手く言い表せないですが、私がシャコンヌを応援しているというか、そういう気持ちになっています。自分もそのような気持ちになるのが不思議です。
鈴木:想像ですが、自分がいてどうのこうのではなくてお客さんが主体になってきているのかもしれないですね。勝手な解釈ですが、もしかするとお客様が主役で定期的に「お客様が集う場所」みたいな感覚かもしれません。
榎並さん:そういう感覚もあるかもしれないですね。それを私はサポートする役割だというような気持ちがなんとなく芽生えているのかもしれないですね。あまり自分の我が強すぎるお店ではない方がいいだろうという言い方もあるかもしれません。だから、私のやりたいだけのことだけではなくてということなのでしょうか。シャコンヌと言ったらこういうお店というイメージが私はある程度できた気がして、それを守る役割みたいな感覚です。だから、守り続けなければいけないし、それを自分の我だけで変えすぎてしまってもいけないのだと思います。
鈴木:その感覚は最近の話ですか?
榎並さん:最近です。5年目の時期では必死過ぎてそのように感じる余裕はなかったです。少しゆったり構えられているという気持ちに変わっているかもしれません。でも、それは本当に7年目以降の話しで最近です。
鈴木:なるほど。
榎並さん:やれるうちはやらせてもらえているという気持ちに慣れているのかもしれません。それまでは、「どうなってしまうのだろう?」という自問自答ばかりでした。言ってしまえばそれは変わらないけれども、少ないお客様でも喜んでいてくれる方がいらっしゃる限りは、やらせてもらえるという気持ちになっているのかもしれません。
鈴木:続けられている感謝の気持ちがあるのですね。
榎並さん:それは、コロナ禍の3年間も少しそのような影響を受けている気がします。あの3年間でお店がやれなくなるならそれもタイミングだろうと思っていました。それでも変わらず存在できているので、まだまだ頑張ろうと思えています。
鈴木:コロナ禍を経て榎並さんの場合はますます居場所というかこの空間を守っていくという思いが強くなっていった感じでしょうか。コロナでダウンして、気持ちが弱ってしまう方もいて、辞める方も当然いましたが、榎並さんの場合は、逆に強くなっているのですね。
榎並さん:そうですね。あの中の3年間でもやはりお客様が来てくださって、マスクでお互い離れながらの接客でもというのがやはり守らせてもらって、来てくださる方がいる限りはという思いが強くなりました。自分でもこうして言葉に出すと、「そうだよな」とまた振り返れるのですけれども、なんとなくそうやって最近思っているのかもしれません。
鈴木:素敵です。普段そんなお話を聞けませんので、今日はありがとうございます。
榎並さん:自分でも「自分はこう思っているのだ」と自覚できますね。
出逢いは9年前
鈴木:続いて、独立してお店をオープンしたときの話しを聞かせてください。僕との最初の打ち合わせはJRセントラルタワーズのカフェでした。初めてお会いしたときから素敵な方だなと感じたのを覚えていますが、逆に僕の印象はどうでしたか?
榎並さん:あれは8〜9年くらい前ですが、鈴木さんが何歳でしたか?
鈴木:もう35歳を越えていますね。
榎並さん:鈴木さんのようなスタイルをしている男性を初めて見て、名古屋にこんな人がいるのだという印象です。そして、なんてピュアなのでしょう。それは、お喋りしていなくてもその印象でした。なんてピュアでセンスに溢れた人というのが本当に正直な印象です。話し方も物腰が柔らかくて緊張をすぐに解きほぐしてくださった感じです。
鈴木:それはよかったです。多分、ピュアというのは世間知らずなだけで、何も知らないだけだと思います。当時は特にそうです。
榎並さん:そのピュアというのはイコール育ちがいいということです。
鈴木:ありがとうございます、母が喜びます 笑 僕の印象も似ていて、榎並さんも物腰が柔らかくとても清潔感のある方だという印象をとても受けました。シャコンヌというネーミングはバッハの楽曲から来ていること、デザインはロゴと名刺とDMから作るということ、どういうお店にしたいかなどお話を聞きました。榎並さんのオーラは柔らかいイメージなのですが、叶えたい部分はしっかりと決めている、そんな強い意思を感じたのを思い出します。
榎並さん:フワフワとした第一印象を与えることが多いのですが、実は割と気が強くて、自分の意思がはっきりしています。占いでも「あなたすごく強いよね」というふうに見抜かれます。
鈴木:では、オープンのときの話に移りましょう。初めに制作したのはこのDMと名刺でしたね。たしか撮影をしたのはこのお店のこの辺りですよね。
榎並さん:あのような本格的な撮影は初めてでした。カメラマンの岡村さんにはお世話になりましたね。
鈴木:これも本当に僕も自分で言うのも恐縮ですけれども、いい仕事ができたなと思っています。会社のスタッフによく話しをするんですけど「スズキモダンはクライアントと一緒に同じテーブルでものを作ろう」と。メールのやりとりだけで物事が進んでいく世の中ですが、榎並さんとの仕事は違います。同じテーブルで共通の目的に向き合って意見交換をして、デザインのアイデアを交換します。まさにこういうクライアントとの関係を僕らは目指していて、このDMが関係性の始まりかと思うと感慨深いです。ここにあるイベントDMも思い出深いです。「山のアトリエ」という展示会で、手作り作家さんたちの作品を販売するイベントなので、手作りにこだわった仕上がりとなっています。デザイナーがイベントロゴを木で彫って、それをハンコにして、それをスキャンして絵柄に載せています。あとは山を意識したデザインの仕上げとして、事務所の前に落ちている実際の葉っぱを拾ってきて、ハンコのようにいろいろな色でみんなでペタペタ貼りました。何より思い出されるのは、このDMを最寄りの地下鉄駅で配ったときに、榎並さんの旦那さんも休み返上でお手伝いいただいて、みんなで一所懸命配ったというのを覚えています。覚えていらっしゃいますか?
榎並さん:もちろんです。彼は、本当に恥ずかしがり屋さんで、そんな見も知らない人に声掛けれるような人ではないです。すごくシャイです。そのような人が自分から言ってくれたはずです。それはでも、鈴木さんが自ら駅で配ると言ってくださったから、「俺も出るよ」みたいなことだったと思います。だから、私が頼んだというよりかは彼が出てくれました。このDMに限らずですが、鈴木さんに制作いただいたものは全部が作品だと私は思っています。シャコンヌの作品、1、2とナンバーがつくようなものです。お客様の中にはファイリングして保管してくださる方がいらっしゃいるほどです。「次、何が届くのかが楽しみ」と毎回言ってくださる方がいて、こんなDMを毎回届くのは、私がもしお客様だったらこんな楽しいことはないです。だから、いつもアイデアを出す際はそのよう方の気持ちも大事にしています。
鈴木:やはり受け取るお客さんの顔が浮かんでいらっしゃるのですね。
榎並さん:そうですね。毎回驚きを届けたいという気持ちです。
鈴木:そうですよね。制作面では僕らもいろいろとトライさせてもらっています。
榎並さん:そう言ってもらえるから、こちらもまた期待して作品がまた生まれてきますが、普通だったらこのようなことはできないことをやらせてもらっているという思いは毎回持っています。
全日本DM大賞にて銀賞&審査員特別賞をダブル受賞
鈴木:そうして、2021年の日本郵政が主催する「全日本DM大賞」で全国で第2位を取りましたね、おめでとうごいざいます。これもふたりでアイデアを出し合いましたね。
榎並さん:久しぶりに自分でこれを読み返しましたが、本当によくできているなと、また熱い思いになってきました。
鈴木:素敵なDMですよね。
榎並さん:多くの言葉をDMに残しましたが、飾りのある気持ちは一切入れていません。言葉一つ一つにしてもそれをよくもこういう形に残してもらえたという感動がまた昨日からよみがえってきて、うるっとしました。
鈴木:ありがとうございます。打ち合わせでは毎回、榎並さんの中に少し核となるアイデアがあって、それを聞かせていただきながらその場で意見交換のセッションみたいなのがあって、どんどん盛り上がって行って、なんとなく7〜8割ぐらいその場で決まったものを僕が事務所に持ち帰ります。社内のデザイナーと喋るとまた別の角度で盛り上がって、このようなDMが出来上がるという、毎回幸せな仕事です。デザイナーも楽しんでやっているし、僕も当然楽しんでやっているし、榎並さんもいいものを作るために楽しんでやっているというすごくいい関係のもとでできているから、当然いいものができるという、とても良い好循環ができています。
榎並さん:5周年にかける私の想いは、もう何も言うことがないぐらいこのDMに表現されています。私の言葉を入れてくれる感覚、紙質、そしてその形状もこれはプロしかできないことという仕事ぶりをすごく近くで見させてもらっています。
鈴木:ありがとうございます。このDMデザインの面白い点としては、4〜5種類の紙を使っているので触って素材感を楽しめる点です。イメージに合う紙を紙の卸売りをやっているお店に買いに行き、事務所のプリンターで自分たちで刷って製本するということにトライしました。分かりにくいのですが、例えばここのページと奥に来るページを同じ1枚のA4で刷ってあとで糸で縫って本の形状にしているということです。計算してやっています。そこが本来は印刷会社でやるのですけれども、自分たちでやるので一つの挑戦であり面白い部分ではあります。
榎並さん:そして、このようなデザインのアイデアを出してくれるというところは、探してもそうないですよ。東京でもないと思います。
鈴木:そうですね。そういって言っていただけると本当にうれしいです。何て言うのでしょう、これはこういう場だから言うわけではないのですけれども、本当に相手が榎並さんだからやれるという感じです。
榎並さん:本当ですか?それが私はすごく不思議です。なぜ私がそういって言ってもらえるのかが不思議ですが、「相性」はすごく関係していると思います。私は、鈴木さんとはすごくそれを感じていています。鈴木さんが来ると、いつもいい空気が入ります。
鈴木:ありがとうございます。
榎並さん:それがもうマッチしているというところもあるのかもしれないれども、本当に何て言うのでしょう?見たことないです。
鈴木:僕も作ったことがないです。
榎並さん:だから、DM大賞に応募するとおっしゃったときに、これが賞に入らなくて何があるのかなというくらいの自信がありました。
鈴木:榎並さんは受賞するのを確信していました 笑
榎並さん:確信たるものがあったというかこれではなかったら何がある?みたいな気持ちでした。だから、「取れないわけがないでしょう」みたいな言い方を私がしたと思います。
鈴木:あのときを今でも覚えているのですけれども、本当に自信ありげに言われていたので、僕の方が逆にびっくりしてしまったくらいです。
榎並さん:自信というか確信でした。
鈴木:確信ですかね。なかなか取れないですよ。他の広告賞もなかなか取れるものではないです。受賞を最初から取りに行くと、通常は奇をてらったものを作りがちです。今回のケースでは榎並さんとの打ち合わせの中で純粋に作ったものが、結果としてそういう賞を取るのは凄いことです。
榎並さん:すごいですね。
鈴木:あり得ないです。その前に、そもそも本当にとても楽しかったですよね。
榎並さん:私も出来上がる過程を報告受けたりしてすごく楽しかったです。出来上がるまでウキウキしました。鈴木さんの熱い思いと私がこうしてほしいという熱い思いが重なって完成したこの作品は、鈴木さんが私と同じように5周年を喜んでくれたからできたと思います。この5年というのは、自分の中で一つの大きな節目で、待ちに待った5周年でした。5年できたという自信にもしたかったから、それを一緒になって同じように喜んでくれたというのが嬉しかったです。
鈴木:喜んで貰えて良かったです。
榎並さん:言ってしまうと「仕事」なわけだから、それを同じように喜んでくれるところから成果物は違っていて、想いが重なってこのDMは生まれたのかなというのは思いますね。
鈴木:やっていて、たしかにそうですね。本当にいいもの作りたいと思っていたので、全集中していました。
榎並さん:それはすごく感じています。だからスズキモダンさんがお付き合いしている他の大きな企業さんやそのような方たちも、きっと同じように感じていると思います。鈴木さんの「クライアントと一緒になって作る」という気持ちは、小さかろうと大きかろうと一緒だと思います。
鈴木:うれしいことを言っていただいてありがとうございます。
榎並さん:それは毎回思います。一緒になってもらっている安心感と感謝があります。
鈴木:話は尽きないのですが、実はもう1個のDMで同時受賞しましたよね。
榎並さん:そうでした、これもですね。
鈴木:クリエイティブ部門で審査員特別賞をいただきました。同じ回に1つのクライアントで同時受賞したという珍しいケースです。
榎並さん:そうなのですね。
鈴木:こちらはこちらでクリエイティブが認められたということです。審査員の講評を聞くと、やはり一つのお店に対してこれだけ手がかかっているというのはなかなかできないことだと仰っていました。仕上がった完成物を見ると、ここのお店がいかにいい洋服を揃えているか、というのが伝わるとの講評を頂きました。
榎並さん:うれしいです。
鈴木:なので、クリエイティブです。
榎並さん:そうですよ。当時展示会を一緒に行う作家さんにこのDMをお送りしたときに「このようなDMは見たことない。なんておしゃれなのですか」というふうにすごく褒めてくださりました。
鈴木:うれしいです。このデザインも覚えていらっしゃいますか?これは多分、冬だったかもしれません。ここの幕を後ろで持っていただいたのが旦那さんと榎並さんです。僕がお店で撮影して、本当に手作り感が満載のDMになりました。これもたしかここの外でその場で撮影したはずです。
榎並さん:そうですね。石畳のところでやりましたね。そういうアイデアがポンポン生まれるのがやはりプロだと思うし、プロの中でもそういう感覚が研ぎ澄まされている方なのだろうというのは毎回思います。
鈴木:ありがとうございます。これもやはり榎並さんとだからできるセッションです。クライアントにも考えがないといけないと思いますし、お客さんの想い、熱い「熱量」があってこそよりいいものができるというのは経験上間違いないです。これもA4の紙を買ってきて、2つに折ってミシンで縫って封筒の形状にしましたね。面白いですよね。
榎並さん:本当ですよ。ミシンをかけてしまうのは面白いです。
鈴木:そうなのです。楽しいですよね。
榎並さん:毎回アイデアにびっくりです。
鈴木:榎並さんのインタビューに来たのに自分が褒めてもらうことばかりで恐縮です。
榎並さん:いや、嘘は本当にないです。何一つ飾った言葉も言っていないし、全て本心です。
鈴木:ありがとうございます。そろそろまとめになりますが、今後も長くお付き合いいただけるとうれしいなと思っています。今後、スズキモダンに期待することみたいなお話しで締めくくれればと思います。
榎並さん:そうですね。期待という薄っぺらい言葉ではなくて、何でしょう、とにかく斬新な思いもよらないアイデアがポンポン生まれてくるので、他には頼めないというふうに思っています。あと、本当に最初の言葉になるのですが、これは鈴木さんのお人柄と育ちの良さから生まれてくるもので、偽って作れるものではないです。なので、このまま引き続きお付き合いいただけたらと思います。本当に唯一無二のスズキモダンさんなのだということは思います。
鈴木:有り難いお言葉に僕が勇気づけられます。これは定期的にインタビューをやった方が良いですね 笑
榎並さん:本当に言葉に嘘はないです。いつも主人と話をしています。
信頼には信頼で返したい
鈴木:今日お話ししてやはり改めて思うのは、人と人との関係性についてです。榎並さんは洋服というものを介してお客様と接していらっしゃいますがその関係性が素晴らしい。お客様が榎並さんに信頼を寄せてお洋服を買いに来る理由が分かった気がしました。そして榎並さんは僕にその信頼を寄せていただいていると伺いましたが、やはり僕も榎並さんに対して「信頼」で返したいというのが、榎並さんとお客様の関係性と似ているなと思いました。
榎並さん:ありがたいです。お客様とそのような話はしたことがないですが、そうありたいと思うし、いつまでも変わらずその気持ちは持っていたいと思います。
鈴木:僕もクライアントに対してお金を頂く対価をしっかりと返したいと思いますが、榎並さんも同じ気持ちでやられているのだと思います。すごく素敵なお店だと、今日お話しができて改めて思いました。
榎並さん:ありがとうございます。
鈴木:10周年のときはまた素敵なDMを作りましょう。
榎並さん:頑張ります、今日はありがとうございました。
プロジェクト概要
実績内容の詳細 | ロゴ・DM・スチール撮影 他 |
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クライアント情報 | chaconnee(シャコンヌ) |
業種 | 婦人服・アクセサリーのセレクトショップ |
所在地 | 愛知県名古屋市名東区 |
プロジェクト時期 | 2015年〜 |
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