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日本ネーミング大賞2023|受賞作品から学ぶネーミングテクニック

つい先日、2023年12月4日に「日本ネーミング大賞 2023」の受賞結果が発表されました。
ネーミングの存在は、私たちが日常で使う商品やサービス、ビジネスにおいてもとても重要な存在です。
今日、同じような製品やサービスが溢れています。そんな中で、自社の商品やサービスを際立たせるためには、やっぱり個性的で覚えやすいネーミングが必要です。スマホやアプリがいい例で、どれも似たり寄ったりですがネーミングがその商品やサービスを「特別なもの」にしています。
次に、ブランディングの観点からもネーミングは大切です。いいネーミングの商品やサービスは、消費者に良いイメージを創造させ購買欲を刺激します。消費者がそのネーミングを聞いて、品質や信頼性を感じることや、その商品やサービスの世界観まで想像できるなら、ブランディングとして成功と言えるでしょう。コミュニケーションを考えたときも、ネーミングは重要です。良いネーミングは話題の中心となり、口コミやSNSでも広がっていきます。世界的な市場でも、覚えやすくて発音しやすい名前は、商品やサービスの認知度を高める助けになります。
さらに、文化的な側面もあります。地域に根ざしたネーミングは、その地域の文化や価値観を反映し、地域コミュニティとのつながりを強化します。これは、地域ブランドの確立にもつながります。
最後に、法的な保護の観点から見ても、ネーミングは大切です。商標としてのネーミングは、商品やサービスの模倣品や不正競争からも保護してくれます。ちなみに2022年度の商標登録出願数は、170,275件だそうです。世の中がそれくらいネーミングに価値を感じてきているということです。そんなネーミングの優れたネーミングを選出・表彰するのが日本ネーミング大賞です。今回は日本ネーミング大賞2023の受賞作品からネーミングに関するテクニックを学びたいと思います。

 

目次
1.日本ネーミング大賞とは
2.日本ネーミング大賞2023受賞作品からの学び
3.今回のまとめ

 

 

1.日本ネーミング大賞とは

そもそもネーミング大賞って何?と疑問を持つ方もいられると思いますので、日本ネーミング大賞の概要を紹介したいと思います。日本ネーミング大賞は、ネーミングの重要性を広く社会に発信することで、ネーミングの質と価値の向上を図り、生活文化を豊かにし、 産業の発展に寄与することを目的に賞賛すべき優れたネーミングを選出・表彰する年に一度のアワードです。審査員には爆笑問題(お笑い芸人)の太田光さん(審査委員長)と奥様で株式会社タイタンの代表取締役の太田光代さん(特別顧問)やデザイン・広告業界で有名なアートディレクターの浅葉克己さん(審査員)などがいます。

また過去の受賞作品には「鼻セレブ」「東京ソラマチ」「ほぼカニ」等があり、有名な商品やサービスもエントリーしています。そしてなによりも嬉しいのが受賞のメリットです。日本ネーミング協会が、プレスリリースやウェブサイトを通して受賞ネーミングをPRしてくれます。

ちなみに昨年の日本ネーミング大賞2022の各メディアでの掲載は、テレビ11件、新聞・雑誌62紙面、ラジオ4局、WEB906件で、広告換算にして5億3千万円を超えるメディア露出があったそうです。企業の皆さんチャンスです!今年の受賞作品が発表されたばかりなので、2024年に自社商品やサービスをエントリーしてはいかがでしょうか?もっと詳しく知りたい方は下記URLから調べてください。※2023年の概要です。

 

日本ネーミング大賞の概要はこちら
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://j-naming-award.jp/assets/pdf/jna_summary2023.pdf

 

 

2.日本ネーミング大賞2023受賞作品からの学び

ここでは日本ネーミング大賞、優秀賞のネーミングの由来や背景、選考理由などを見て、ネーミングに関するテクニックを学んでいきたいと思います。

 

 

日本ネーミング大賞「初音ミク」

クリプトン・フューチャー・メディア株式会社

https://ec.crypton.co.jp/pages/prod/virtualsinger/mikunt

歌詞とメロディーを入力して誰でも歌を歌わせることができる「歌声合成ソフトウェア」。大勢のクリエイターが『初音ミク』を使用して制作した音楽や、パッケージに描かれたブルーグリーンのツインテールが特徴的な初音ミクをモチーフにしたイラスト作品等をインターネット上に投稿したことで、多種多様な創作の連鎖が生まれ、初音ミクの存在は世界に拡がりました。

 

ネーミングの由来
「未来からきた初めての音」が由来です。初音ミクの前にも弊社で開発・発売していた歌声合成ソフトウェアはありましたが、名字はなく名前だけでした。初音ミクは開発時に、より歌ってくれるシンガーがイメージしやすいように工夫を行いました。楽器の要素を取り入れた未来的な衣装にブルーグリーンのツインテールという特徴的なビジュアルと、年齢・身長・体重という基本プロフィールを設定。さらに今までのソフトウェアには付けていなかった、意味合い(由来)を持たせた名字を付けることで、よりそのシンガーのイメージを描きやすくさせました。今では初音ミクという名を聞くとその姿を思い出していただける方が多いのではないかと思います。

 

選考理由
「日本発の世界で活躍しているバーチャル・シンガー」 「音楽業界にも多大な影響を与えジャンルを創出した」 「ネーミング自体にテクノ感・デジタル感を感じる」「未来からきた初めての音というコンセプトがグッド」 「テクノロジーだけでなくキャラクター性を持たせたことが成功要因。ネーミングが世界観を拡げた好例」 「海外アーティスト含め数々のコラボレーションを生みだし、商品価値が非常に高い」 「海外でも同じ名前で展開しているところも素晴らしい」など沢山の好評コメントがありました。 また本年、設定年齢と同じ16歳を迎えられたことも、支持・評価された理由となりました。 日本ネーミング協会は、ネーミングは、マーケティングの成功に寄与するだけでなく、商品やサービスに命を吹き込む、そして、時には未来への羅針盤になる」と考えます。その意味においても「初音ミク」は改めて「ネーミングの重要性」を広く社会に発信できるものとして2023年に賞賛すべきネーミングと評されました。

 

学びポイント
歌声合成ソフトウェアに「初音ミク」という特長的なヒューマノイドキャラクターを加える事でこの子に歌わせてみたいと思わせる行動を促すことに成功しました。「コンセプト」「キャラクター」「ネーミング」「個人が表現できるプラットフォーム」のバランスが時代と共に初音ミクを世界に広めた要因ではないかと考えます。ここまで組み合わせることはとても難しいと思いますが、ネーミングの背景やコンセプトをしっかり決めておくことが鍵ではないかと思います。

 

 

優秀賞「いまかの」

株式会社TONAOKU

https://tonaoku.jp/imakano.html

薩摩の“白豊芋“を白麹で仕込んだ本格芋焼酎 「いまかの」。「いまかの」は姉妹商品「もとかの」と味の変化を楽しめる芋焼酎で、ネーミング通りの味を表現できました。デザインは若い世代や女性にも本格焼酎を楽しんでもらいたいという想いから、キャッチーなネーミングとは対照的に白を基調とした上品でやわらかいイメージを意識されたそうです。

 

ネーミングの由来

「いまかの」のネーミングは姉妹商品「もとかの」と同じタイミングで生まれました。当時チームで食事をしていた時に、“元カノ“という言葉はあるけれど“今の彼女“は何ていうの?そんなたわいのない会話から生まれたのが「いまかの」です。キャッチコピーは「朝まで呑みたい、いまかの」。朝まで呑みたくなるほど、すっきり軽やかな飲み心地をお楽しみいただける商品です。また「いまかの」と「もとかの」をブレンドした飲み方“修羅場“が人気です。味はもちろんのこと一度聞いたら忘れられないネーミングで酒席での会話を楽しんでいただきたい、チームで楽しみながら真剣に企画した商品です。

 

選考理由

「ふわりとした感じでお酒であることがわかりやすい」「“もとかの“も発売されていて、同時に飲む修羅場を楽しむという発想も面白い」「ネーミングの面白さでどんなものだろう?という想像や購買意欲を掻き立てられる」「ユニークでお酒の席で会話が弾みそう」「作り手の楽しい気分が伝わる」など、沢山の好評コメントがありました。またコロナ明けが本格化した今年、お酒を楽しむ機会や場も戻りつつあり、そんな宴席を楽しくできるネーミングであることも支持・評価された理由となりました。

 

学びポイント

これはもう聞いたら忘れないインパクト90%のネーミングです。しかも姉妹商品の「もとかの」と同じタイミングで発売することで2つの商品を対決の構図にすることで〇〇派的なムーブメントも起こせそうな面白さがあります。しかも「いまかの」と「もとかの」をブレンドした飲み方「修羅場」を楽しむなんて作り手のニヤニヤが想像できます。このご時世、言葉の不自由を感じ、コンプライアンスを気になる中で網目をすり抜けた気持ちいいネーミングです。ひらがなにすることでやさしく美しい日本語のようにも感じるのもネーミング面白さです。

 

 

優秀賞「リップモンスター」

花王株式会社

https://www.nomorerules.net/pickup/lip_monster/

「KATE(ケイト)」は、「no more rules.」をスローガンに、時代やトレンドに縛られないメイクを提案するグローバルメイクアップブランドです。
2021年5月に発売した、落ちにくい口紅『ケイト リップモンスター』は唇から蒸発する水分を活用して密着ジェル膜に変化させる当社独自の色持ち技術により、長時間“つけたての色“が持続。保湿成分配合で、保湿と色持ちを兼ね備えた高発色リップです。

 

ネーミングの由来

「リップモンスター」という商品名は、落ちにくそう、なんだかスゴそうという最強感や期待感を連想させる名前として考えました。そこから『モンスターが住む世界』をイメージしてストーリーを深めていき、各色の名前をつけています。

 

選考理由

「コロナ明けのメイク需要が復活する中、ネーミングで話題になった商品。今年賞賛すべき」「私は私を表現するという元々のブランド(ケイト)らしさもあって良い」「イメージだけの名前ではなく“つけたての色そのまま“”落ちにくい“機能の裏付けがある」「落ちにくそう、から、最強・貪欲な期待感、まで機能面と感性面を両方見すえたネーミング」「カラーネーミングも突き抜けた感じで、よくぞ、この名前で出したと思う」など、沢山の好評コメントがありました。
長いマスク生活の時代にもフィットし、今商品のマーケティング力の高さにネーミングが大きく貢献できている点も支持・評価された理由となりました。日本ネーミング協会は「ネーミングは商品の売上げに貢献することはもとより、時代を反映させた新しい生活文化を生みだしていくチカラがある」と考えます。その意味でも「リップモンスター」は2023年に賞賛すべきネーミングと評されました。

 

学びポイント

コロナ禍マスク着用が常態化した21年に発売した商品ということもあり、リップモンスターは話題になっていたのが記憶にあります。私の周りでもマスクで隠れるから化粧をしなくてすむなど多く聞こえていた気がします。その中でどんなときでもリップメイクを楽しみたいというニーズを探しだし、そこに対して挑戦的なリップモンスターというネーミングを打ち出す潔さに感服しました。

 

 

3.今回のまとめ

受賞している作品を見ても分かる通り、成功している商品はネーミングだけでは成り立ちません。マーケティング、デザイン、広告、販促それぞれの要素が成り立ってはじめてネーミングが生きてくるのです。逆に中身をいくら研究してもネーミングを疎かにすることでパワーダウンしてしまうこともありますので、気をつけなければなりません。また、日本ネーミング大賞のエントリーは、ネーミング1件(1部門)につき5,500円と他のアワードに比べてお安くエントリーできますので、どんどんチャレンジしていきましょう。

引用元:
https://j-naming-award.jp/