マーケティングと行動心理学 その11―バーダー・マインホフ現象―
それまで知らなかった言葉や物事など、何か新しいことを知ったら、それが急に身の回りに増え始めたような経験はありませんか?これは「バーダー・マインホフ現象」という効果がはたらいているからです。この不思議な認知効果はビジネスシーンにおいても有効活用できる内容です。今回はこの「バーダー・マインホフ現象」をご紹介します。
1. バーダー・マインホフ現象とは?
2. ビジネスシーンでの活用法
3. 今回のまとめ
バーダー・マインホフ現象とは?
名前の由来は、少し複雑で、この考えを提唱した研究者や心理学者の名前から来ているものではありません。バーダー・マインホフは1970年代にドイツに存在したテロリストグループの名前です。ある新聞の読者投稿欄に20年以上前に存在したこのテロリスト集団の話をたまたま友人とした翌日に「今まで聞いたこともなかったのにニュースでそのテロリストグループに関する話を目にした!」という連絡を受けて驚いたというエピソードを投稿した。それ以来、他の読者からも同じような体験談が集まったため、「認識した途端によく目にするようになった」という現象を「バーダー・マインホフ現象」と呼ぶようになったそうです。
この現象、より科学的には「頻度錯覚」と呼ぶそうです。私たちの日常には、とんでもない量の情報・思考・感情が待ち構えています。さすがの脳といえど、それらすべてを処理することは不可能なので、どこに注意を向けるべきか選ばなければならない。これを「選択的注視」といいます。私たちが何か新しいことを学習すると、この選択的注視が変化し、それまで無視していたことに以前よりも注意が向けられやすくなるといメカニズムでこの現象は起こるそうです。本人は、なんだか特別なことが起きているように思えてくるのですが、ここで”錯覚”と呼んでいるように、本当は元々あったことに目が向くようになっただけで、これは究極的には脳の働きによって生じているに過ぎません。脳は世界が合理的に見えるようなパターンを探すのが大好きなため、一度新しい情報を見つけたら、脳は引き続きそれを探し求め、そのために急に増えたと錯覚するようになる。ということです。
ビジネスシーンでの活用法
バーダー・マインホフ現象で重要視される「認知」は、ビジネスにおいても大きな意味を持ちます。取り扱う商品やサービスが「最近良く見かけるなぁ」という認知を獲得していれば、消費者が必要に迫られたとき、まっさきに思い起こしてもらいやすくなります。このように考えると「買ってください!買ってください!」と訴求しなくても、必要になったとき一番に思い出してもらえるよいイメージを植え付けることができれば、それだけで購入してもらえる。メーカーなどがイメージ広告を多用する意味がうなずけます。また、バーダー・マインホフ現象は新しく知った知識や経験によって意識が傾きます。そこで、無料体験やワークショップなどが有効です。例えば、ベビーグッズを販売しているメーカーが「乳児・幼児の知育」についてのワークショップを開くことで、受講者が新しい知識を得、以後の知育に関するバーダー・マインホフ現象を強めていき、購買を促すといったこともできます。
今や商品をそのままパワープッシュするだけでは顧客に通用しない時代です。こういったちょっとした情報刺激によって、顧客の普段の生活の中で、心や意識が傾くことを待つような施策もとても大切です。
今回のまとめ
認識した途端によく目にするようになったというバーダー・マインホフ現象を紹介してきましたが、これらの解説でも分かる通り、私たちは自分で思っている以上に選択・注意・意識をなんとなく行っているということです。しかしだからこそ、こういった心理的アプローチが効果を発揮するわけです。心理効果を正しく理解して、選択・注意・意識をなんとなく行っている潜在顧客に対して、より適切なエスコートを促していってください。
> 関連記事
NEXT
「マーケティングと行動心理学 その12―シャルパンティエ効果―」
BACK
「マーケティングと行動心理学 その10―ダブルバインド―」