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デザインに違和感を感じたら、ここに注目! ②

デザインの印象を整えるために見直すべき要素、前回「デザインに違和感を感じたら、ここに注目! ①」ではレイアウトとフォントの2点をご紹介しました。今回はデザインの中でもダントツでターゲットを視覚的に惹き付けるための要素、「写真」について掘り下げていきたいと思います。写真は、ブランドイメージの構築や商品の魅力を伝える上で重要な役割を担います。適切な写真を使用することで、その価値観を伝えることができます。しかし、「何か違和感のあるデザインだな」と感じたとき、それが使用している写真に由来する場合、写真のチョイスや加工具合が原因であることがあります。デザインの全体を見渡し、テーマや他の要素とのバランスを考慮しながら、適切な状態の写真にすることで印象を整えることが出来ます。

 

写真の選択し直しで違和感をなくす

・構図やアングルの違う写真に変更する

写真の構図やアングルが不自然である場合、違和感を感じることがあります。「健康的な日本の朝食」と題してイマイチな例を2つ作ってみました。

パッと見た時に「健康的な感じがするな」という感想は得られるでしょうか?お皿に盛られた料理はちゃんと健康的な料理なのかもしれませんが、アングルが微妙だったり、ピントの合っている位置が的はずれなためしっくりと来ない写真のチョイスになっています。

テーマや主役がはっきりしている場合、このようにメインとなるものをしっかりと撮した写真をチョイスするのが良いでしょう。また、写真の構図がデザインのバランスに合わない場合でも、違和感を感じることがあります。例えばエネルギッシュで躍動感のあるデザインにしたい場合、対象物が中央寄りであったり、アングルが一定であったりすると、デザインにダイナミックさがなくなってしまい、違和感を感じることがあります。

 

・他の要素とマッチした写真に変更する

使用している書体やロゴ、背景、色などとの相性が悪い場合、違和感を感じることがあります。例えば、明朝体のような古風なフォントを使用している場合に、現代的な写真を使用していると、相性が悪く違和感を感じることがあります。
具体的な例を作ってみました。

幼稚園のロゴの隣に写真を配置してみたのですが、やや違和感があります。カラフルでポップな書体の幼稚園のロゴは、明るく、楽しく、子どもらしいイメージを連想させます。ですが、左の写真からそのようなイメージを得ることはできるでしょうか?このような、まったく異なるイメージや印象を持つものを組み合わせると、統一感がなくなり、見た人にとって不自然で違和感を覚える可能性があります。

明るく、楽しく、子どもらしいイメージで写真を差し替えてみました。同じようなテーマやイメージを持ったものを組み合わせることで、統一感を出すことが大切です。

 

写真に手を加えることで違和感をなくす

・生々しさをなくす

ライティングの調整がされていない写真や、撮影してそのままの写真はリアルで生々しい雰囲気のある写真になってしまい、妙に生活感が出てしまいます。あえてその雰囲気を出したい狙いがあれば良いですが、そうでない場合は写真に手を加えましょう。
簡単な一例を作ってみました。朝ごはんを食べる子供の写真ですが、文字まわり同様元気な印象にしたい場合はどうでしょうか。加工前(上)と加工後(下)を並べてみました。

加工後の写真のほうが明るく爽やかで、「朝食」というテーマとマッチングしている感が強いですよね。健康的なイメージもより増しました。

写真に手を加える場合、まずはライティングの調整から始めることをお勧めします。ライティングが調整されていないと、写真には不自然な陰影や明暗差が生じる可能性があります。ライティングを調整することで、より自然で美しい光の表現を実現できます。また、彩度やコントラストなどのトーン調整を施すことも有効です。彩度を上げることで、写真に色彩豊かで鮮やかな印象を与えることができます。コントラストを調整することで、明るい部分と暗い部分の差がはっきりとして、写真が立体的に見えるようになります。

さらに、シャープネスやブラーなどのボケ調整を施すことで、写真により立体感を与えることができます。以上のような加工を施すことで、写真に自然さや美しさを与えることができます。

 

・より魅力的に見せる

上記の生々しさをなくすだけでも写真はぐっと良くなりますが、与えたいイメージを加工によって施すと、よりインパクトを与えられる写真へ進化します。

ウエディングのデザイン例です。こちらの写真でもあまり違和感がないように見えますが、手を加えるともっと魅力的に見せることができます。

ピンクっぽい色味を足して、エッジをソフトにする加工を施してみました。幻想的な雰囲気を足すことで、写真から漂うロマンチックな感覚が強まりました。このように加工することで、日常から離れた別世界のような感覚がプラスされ、特別な瞬間や場所で撮影された写真をより一層特別なものと印象づけることができます。

プロテインの広告の例です。モデルの方は十分にかっこよくて筋肉も立派ですが、何だか物足りない感じがしませんか?

筋肉の陰影を強調するために、コントラストを調整して明暗の差をはっきりさせ、エッジを立たせて細かなディテールをはっきりさせました。また、青みとノイズも加えてクールさをプラスしました。この加工によって、力強さやダイナミズム、ハードワークなどのイメージを強調することができます。ロマンチックさ、幻想的、かっこよさなどを足す写真加工は、イメージに近い映画のポスターなどを参考にしてみるのもオススメですよ。

料理の写真をデザインに使用する場合の例です。こちらの写真だと、全体的に白くてのっぺりとして冷たいお弁当の印象です。

全体的に黄みと赤みを足した後、料理の色のバランスをそれぞれ整えて、背景を合成してみました。料理ひとつひとつの色味を調整することで、その食材の特徴を引き出し、より魅力的に見せることができます。また、写真の背景や色味によっても、食欲をそそる効果があるため、背景を合成するのもひとつの手です。たとえば、木の質感や自然の光をイメージさせる背景は、自然な美味しさや温かみを感じさせます。一方、明るい色味やフラットな背景は、スタイリッシュさや洗練された印象を与えることができます。

そもそも料理写真の場合は、料理の盛り付けが雑だったりイマイチだと、構図やアングル、写真加工でどれだけ頑張っても見栄えさせるのが難しいです。撮影の際はフードコーディネーターの方にお願いすると美しい料理写真が撮れますよ。

<手の加えすぎに注意>

私達デザイナーもたまにやってしまうのが、見慣れすぎてしまい「写真の加工が過度になってしまっているのに気づかない事」。時間を置いて見直してみると「あ!加工しすぎかも…」となることがあります。あまり加工を施しすぎると、写真のディテールを損なうことがあります。

こちらも一例ですが、明るい部分のディテールがつぶれてしまって、折角カメラマンが撮影した綺麗な写真も台無しに…。

写真の鮮明さが損なわれ、不自然な印象を与えることがあるので注意が必要です。また、誇張表現となってしまい「写真で見たものとイメージが違う!」とクレームが来てしまう恐れもあります。

今はスマートフォンのアプリでも簡単に写真加工を行うことができ、レタッチャーやデザイナー以外の人でも手軽に写真加工ができる時代になりました。そうした一般の方が行う写真加工とは「自分のため」「見栄えのため」の加工ですが、広告における写真加工とは「情報を正しく伝えた上で魅力を理解してもらうため」のものです。やりすぎに注意してください。

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今回は「写真」の1点のみに絞って、デザインの印象を整える方法をお伝えしました。写真の選択や加工に関しては、技術や知識があるかどうかだけでなく、写真に対する感性やセンスもクオリティに大きく影響します。

前回と今回ご紹介した要素を見直すだけでも印象は整えられますが、さらにより良くするための別の要素も約1ヶ月後の続編にてご紹介致します。

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